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□SAYONARAベイベー
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SAYONARAベイベー
ジリッと交わる視線に、胸の高揚を抑えきれなかった。
あの時の感情は今でも覚えている。
この人の隣で笑って、泣いて、怒って、喜んで、それが私が望んでいた運命なのだと思った。
こんなにも愛しい人に出会える人生を、私は望んでいたのだと。
それでも気持ちとは裏腹に、時間はただ過ぎ去っていくだけだった。
誕生日を聞いても有耶無耶にされ、夜中暫く家を開けていた理由を聞いても曖昧にされる。
私は銀さんのことを何も知らなかった。
「銀さん…会いたい。」
「俺もだ。」
「ほんとに?嘘なんかじゃない?」
「俺には小梅しかいねぇよ」
「愛してる…?」
「あぁ。愛してる。」
「銀さんを信じても…いい?」
「…小梅、好きだ。こっち来い。」
「寂しいよ…」
「悪ィ。今手ェ空かねんだ。」
「じゃあ、後でかけ直して…?」
「あぁ。必ずかける。待ってろ。」
「銀さん、お願いっ…」
「仕事終わったらそっち向かう。」
「やっと会えるんだね。」
「俺だって空いてぇよ。」
ほら…ね。
こんな簡単な言葉にほとされる私は、何にも変わっちゃいないのよ。