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□あやしいひかり
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あやしいひかり
元から私達は恋人らしくなんてなかった。
一緒にいてもそれが当たり前になってしまえば、どんな高揚も消えてしまう。
はじめの頃は、彼が近くにいるだけで眩しくて儚く感じられたものだというのに。
人とはそういうものなのだろうか。
そんな建前を並べたって、今はもう君の姿すら見つけられないのに。
あの時の温もりに、無様な程縋りついていた。
これもきっと、人の性というものなんだな。
いつも互いに気を使って、丁寧に扱うかと思えば時には突き放す。
そんなことばかりしていたから、お互いが何を見つめていたのかも分からなくってしまったんだ。
笑った顔を思い出して、私は泣いている。
あなたの泣いた顔を思い出して今度は私が笑っている。
そんな日々が嫌と言うほどまとわりつく。
考え事をしたってあなたは私を独占する。
いつか語り合った夢がまだ変わることなく残っているのなら、私はその形を組み立てるパーツになれるだろうか。
あなたの温もりが酷く新鮮で、鮮明なほどに蘇って。
何度も泣き叫んで声は枯れて。
それでもあなたに届くと、気付いてくれると祈りながら叫び続ける。
だからまだそこで。
今はそこで笑っていてよね。