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□エンディング
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エンディング
「俺はァ江戸に出る。」
二人でよく腰掛けた縁側で、二人したことのない冷めた会話だった。
いつも決めたことだけを告げて、そのまま立ち去る。
それでもお前は、ただ笑って俺を見ていた。
道場に握り飯を持ってきたり、道着を洗っていたり、一稽古のたんびに手拭いを変える。
毎日毎日、当たり前に変わってしまっていたことも、江戸に出てしまえばガラリと変わる。
俺ァ、間違っていたか?
そんな顔で笑わせることをしたのか?
じゃあなんて伝えりゃ良かったんだ。
いつもみたく接しろと言われても、そんな相変わらずだろう。
いつだってその通りだ。
この場所で眺めた七夕みたいだ、とお前は笑った。
結ばれることのない、そんな奴等に、俺達を重ねるのか?
その川を渡っちまえば、お前は楽になるのか?
俺なんて置いて、行ってしまえ。
その方がお前もよっぽど楽しいだろう。
でもな。
突っ張り放したわりには、空いたでけぇ穴は、埋まりゃしねぇんだな。