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□Lamb.
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Lamb.
「会いてぇ。」
そんな切羽詰った声を出せるほど、演技が上手くなったのね。
その裏では何を考えているの?
私はそんな鈍感な女じゃない。
飛ばしてきたバイクから足早に降りてくる。
ヘルメットを外すその左手に、跡を示すものは何?
「いきなりで悪かったな。最近仕事が立て込んでよ。」
「そうなんだ。お疲れ様、疲れてない?」
仕事、なんて都合のいい。
誰のための、何のための仕事なの?
空いた寂しい時間にまた私を使う。
普段はどんな風に愛を囁いて女を誑かしているの?
そんな偽りの熱を注げる根性は呆れるほど上出来ね。
こんなイカれたことだって許されてしまう。
どこを見ても嘘、嘘、嘘で固められた偽造の世界。
その中に一つでも、私に向けられる愛はあるの?
「おいで。小梅。」
探しても探してもあなたしか見つからないの。
「ねぇ銀時。愛してる。」
でもほら。
やっぱり私もそんな世界の住人なんだわ。