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□助演女優症
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助演女優症
「小梅…愛してるぜ。」
泣きそうになる私に、晋助は甘い言葉を向ける。
これはいつものこと。
私が泣きじゃくる理由を知りながら、こうやって言葉をかける。
それに腹を立てるどころか、そんな戯言でさえ心地よくなってしまう。
また囁かせたいその言葉の為に、私からも鎌を掛ける。
「私も、愛してる。」
これは半分嘘で、半分は本当。
重なる唇にまた胸を高鳴らせ、続きを乞うている。
それでももうこれ以上は繋いでくれない。
慣れてしまった愛撫はもっと、もっとと激しさを求めている。
そんなのも私だけで、自分が惨めに馬鹿らしく思えくる。
「ねぇ、晋助。」
もうこの男の手の中にあることぐらい知っている。
今更逃げようだなんて思わない。
逃げられるはずがないから。
「愛してる。」
どれだけ心中を言葉に出しても、あなたに伝わる事はない。
それでもこんな安っぽい言葉で、あなたが私を見てくれるなら。
「俺から離れられると思うなよ?」
そんなお決まりみたいな台詞だって、私を惑わせるには十二分よ。