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□最後のリボルバー
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「そんな危ねぇモンぶら下げて、何してんだ」


リボルバー。

届いた手紙と一緒に、同封されていた。



「さよなら、“万事屋さん”。」



フッと笑う銀ちゃん。


その端麗な顔を灯台の光が照らす。

それがまたいつしかのデジャヴを感じさせる。


夏祭り。 花火で照らされた銀ちゃんの横顔。

あの時あなたは振り返って、


『また来ような。』

そう言って笑っていた。


その時からもう叶うはずのない願いだと知っていたのに。

私達は最初から気付いていたはずなのに。





桜の咲く木下で、あなたは私に手を差し伸べた。

綺麗な手を汚してしまうのが怖くて、私はその手に縋ることは出来なかった。

それでもあなたは私を見放さなかった。


そんな馬鹿な人に、変な期待を持つなって方が馬鹿な話よ。



私は人を殺めた事なんて数え切れないほど。

ただ仕事を引き受けて、殺すだけだった。


なのに、

「小梅、泣くな。」

どうしてもこうも、あなたは、私の心を乱していくの?




思えばあの日から感情が芽生えて、

あの祭りの日にそれが確信に変わり、

紅葉に見舞われながら付けられたのは優しく暖かなもので、

そんな日々が今日で終わる。



一度おろしたリボルバーをまた向ける。




「最後ぐれぇ笑ってくれないもんかね、この頑固者。」


優しく笑う銀ちゃん。


「ごめ……ごめん、な…さ、い」

耐え切れなくなった私は、嗚咽混じりに謝った。

これを最後に、私は引き金に手をかざした。

「--------------------」


「っ………」







……パーン







「っ…くっ……ひっ…」


もしも私達がこんな出会い方じゃなかったら。

もしも私達が何者にも邪魔されない運命を辿えていたら。

今度はちゃんと、二人同じ気持ちで花火を眺めて、そこでまた約束をしよう。

きっとそれは、そう遠くはない未来。

互いの思いに気がついた時、離れたくないという願いが無残にも散っていく。

だからもうそうならないように、


「待っててね」



私もまた、馬鹿な人間なのだろう。









『ずっと一緒にいような。』




















----------パーン。




END.

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