ボーボボ




過去拍手御礼分倉庫。
◆夏は嫌い。でも寒くなるとあの暑さが恋しくなる。 

戸叶→鈴音。










ジメジメした空気の中、晴れ晴れと青い空。



「死ぬ…いっそ殺してくれ」




一歩も動く気力なんかなくて。
グラウンドのど真ん中で大の字で寝転がる。

サンサンと照りつける太陽。


夜行性の人種には、お前今更お天道様の下に堂々と出て来て良いと思ってんのかコラ。と痛い視線と同じように厳しい。





「………夏なんか嫌いだ。」

「暑いのダメなの?」



ポツリと零した呟きと同時に、顔に陰がかかる。
立ったまま見下ろして来た少女。




「大丈夫?休憩くらい日陰に行ったら?」

「いや、いい………」

「そう?でも眩しくない?」

「眩しい。なぁ、鈴音」

「ん?」

「俺は実は吸血鬼なんだ」

「は?」

「だから、太陽が苦手でな。夜に活動をしてたんだ」

「うん」

「けれど、自分では光らない月をあんなにも明るく照らしてくれる太陽の存在が気になって、憧れた。それほどまでに強い光、どんなものかと」

「ふーん」

「実際に見てみたら、殺人的に強い明るさに目が眩む。暑い、照りつける光と熱。しんどい、ここは自分が立てる場所ではない。しかし」

「しかし?」

「その圧倒的な光が強過ぎて。だからこそ憧れて。届かない、相応しくないと思いつつ惹かれていく。相応しい人種になれるように、いつか……」



ふんふん、と熱心に聞いてくれる。

こんな下らないこともきちんと聞いてくれるヤツなんざそうそう居ねぇ。



「っつー設定でマンガ描こうと思ってるんだが」

「へぇ、何か、珍しいね」

「そうか?」

「割と定番じゃない?」

「そうか」

「設定はね。恋愛マンガ?」

「そう思うか?」

「うん。トガは今恋愛で悩んでるの?」

「ハ?」



ニマァ、と変な笑顔を浮かべて。



「大丈夫だよ、トガちゃんイイ男だもん。憧れてるだけじゃ、ダメだよ」

「………ハ。そいつぁどうも」

「マンガ、出来たら読ませてね!勿論、ハッピーエンドで!」



クスクスと笑って、跳ねながら去って行く。





憧れて、憧れた。
陰がなくなった分、太陽がまた俺を照りつけて。


眩しい。
暑い、強い。


それでも、太陽を見ずには居られない。





【おわり】

2010/09/13(Mon) 01:17 

◆台風って学生のトキはわくわくしたものだ。 

黒木→メグ。














ゲリラだかなんだかしんねぇけど、ここは平和な日本なんだよ。



深い溜息を吐いて空を見上げる。
さっきまでの晴天が嘘のように打って変わって降り出した雨。


あぁ、もう。



雨の日はロクなことが起きねぇ。


また、やっちまった。
ウチのチームにちゃんとした監督なんざいやしねぇ。ルイが1人でメニューやら作戦やら組んで。アイツ1人でいっぱい抱え込んでやがんのに。マネージャー失格だなんて思うような殊勝な心構えなんざ普段なら持ち合わせてねぇのに。
あぁ、気が滅入る。


あれは言わなきゃ良かった。これは言っておけば良かった。あーすれば、こーすれば。

際限のない後悔が。

ヤバい、何だか泣きそうだ。





「お!!!」




頭を掻き乱して居れば、脳天気な声。



どうして、こう。コイツは。



「雨宿りか?」

「うっせぇボケ」

「傘ぐれぇ持っておけよ。一緒に帰るか?送ってくぜ」

「いらねぇ」



ムス、と返事をすれば、許可も取らずに隣に並ぶ。


何で、こう。
滅多に会わねぇのに、アタシの機嫌が最悪の時に会うんだ、コイツは。




「傘の意味ねぇわ。足チョーぐしょってら」

「………」


話を聞く気力もなくて。
うっかり出そうになる涙を堪えるのに精一杯で。




「なぁ、メグー」

「………」

「あれ?おーい」

「…何だよ、うっせぇな」



顔を上げれば、何やら馬鹿面でニカッと笑って。

あ?
嫌な予感がする前に屋根のあった場所から、腕を引っ張られて。




まさしく、バケツをひっくり返したような雨に全身がずぶ濡れになる。




「………テメェ…何すんだ」

「何となく?」

「ふざけてんじゃねぇぞテメェ一体何がしてぇんだっ!!」




胸倉を掴めば一考した後、ヘラっと笑って。



「怒らせたかった?」

「はぁっ?」







「本当は泣かせてやりてぇけど、俺の前じゃお前泣かねーだろ?無理して我慢するよりだったら怒ってる方がマシじゃね?」

「……………」




何て、勝手な理屈。




「だから、あたしはアンタが嫌いなんだよ」

「知ってる。それでも俺はメグが好きだ」





真っ直ぐに笑って。
再び泣きそうになりそうで、誤魔化すために黒木の思い通り、土砂降りの中でアイツを蹴り飛ばした。




雨なんか、嫌いだ。






【おわり】

2010/09/13(Mon) 01:16 

◆雨は湿気で髪が広がる。 

十文字→まもり。












「あら?」

「……ウス」



昇降口で顔を合わせたのは、マネージャー。


「帰ったんじゃなかったの?」

「一旦帰ろうとしたら、ケータイ忘れて取りに来た」

「で、この雨?」

「そゆこと」



轟々と降る雨。


「はぁ、ついてねぇ」

「あ、私傘あるから一緒に帰る?」



願ってもいない申し出に頷いて。
マネージャーから借りた傘を受け取り、広げて帰り道を歩く。



「助かった、ありがとうございます」

「ううん、私こそ遠回りさせちゃうけどゴメンね」

「いいよ。大した距離でもねぇし」

「黒木君と戸叶君は?」

「あー、何か用事があるっつって先帰った。タイミング良いよな」



クスクス笑って。
弾むようで弾まない会話を繰り返して。




「通り雨かと思ったけど、止まないね」

「ッスね」



未だに強く傘を打ち付ける。
正直、右肩がずぶ濡れなのだが。



黒い雲。あぁ、来そうだなぁ。
なんてボンヤリと思ってたら。
ゴロゴロ。





「あー、雷くんな」

「え?」



ピカッと一瞬明るくなって。
数秒後に大きな音が。




「…………近かったね」

「あぁ………はっ?」




何だか肘がやけに温かくて。
隣を見てみれば、マネージャーがキュっと。




「あ、ゴメンなさい」


パッと離して。


「癖なの。セナ昔から雷苦手だったから、いつも手握ってあげてて」



苦笑するマネージャー。
いや、セナ、っつーか。




ゴロゴロ。
ピカッ。
ドォーーン。




もう一発。
マネージャーの肩がピクっと震えて。





思わず吹き出しそうになるのを堪えて。
普通に振る舞うマネージャーに。





「あー………俺も雷ダメなんだわ」

「え?」

「だから、肘。掴んでてくれよ」




顎で指すと、キュっと素直に肘に触れてきた。




ゴロゴロ。
ピカッ。
ドォーーン。



肘に触れた細い指に力が入って。
思わず肩が揺れる。




「…………」

「…十文字君、何だか、バカにしてない?」

「してねぇよ、姉崎センパイ」





少しだけむくれながらも、手を離さないマネージャーに気付かれないようにまた肩を震わせた。


雨の日も、嫌いじゃない。








【おわり】

2010/09/13(Mon) 01:14 

◆if...長男の場合 

十文字→まもり→。です。









もし、俺ならあんなに怒らせたりしない。

もし、俺ならあんなに目に涙浮かべさせたりなんかしない。
もし、俺ならあんな風なアンタを放っておいたりしない。



でも。







俺にはあんな風に怒ったりしない。
あんな風に泣いたり笑ったりしてくれない。




いつだって、彼女の見たことのない表情を引き出すのは、アイツだけ。







おわり。






お目汚し失礼しました!

2010/02/04(Thu) 00:26 

◆if...次男の場合 

黒木→メグ→。です。












もし、俺ならアイツの誕生日とかにはすっげぇサプライズとか用意してやんのに。

もし、俺なら照れずにいっぱい愛してるって言ってやんのに。
もし、俺なら頭ん中ずっとお前だけでお前を一番に優先してやんのに。







俺にもよ、お前をいっぱい呆れさせて、いっぱい怒鳴らせていっぱい笑わせてやれることは出来っけどよ。




でも。

俺には怒鳴ったあとに、あんな風に柔らかい顔で微笑んだりなんかしてくんねぇんだよな。








おわり。




相変わらずドマイナーですんません。

2010/02/04(Thu) 00:26 

◆if...三男の場合 


戸叶→鈴音→。です。












もし、俺ならお前を置いてったりなんかしない。

もし、俺ならお前を守ってやるのに。
もし、俺ならお前の笑顔の奥にある不安とかひっくるめて全部抱えてやるのよ。




でも。




その背中に追いつきてぇ、ってお前は思うんだよな。
普段はゆっくり歩くあいつのペースでゆっくり互いに歩きてぇんだよな。
抱えたり抱えられたりじゃなくて、一人一人がちゃんと立って支えていてぇんだよな。


俺には、支えさせてくんねぇんだよな。お前は。








おわり。





めちゃくちゃな文で失礼しました。

2010/02/04(Thu) 00:25 

◆戸→鈴 


黄色は止まれば気を付けなくて済む。










「あ!トガー!!」


あん?マンガから目を離して声のする方向を見る。
まぁ、俺をそんな呼び方をするヤツは2人しかいない。そのうちの女と言えば。



「鈴音」

「やほー!」



ヒラヒラと手を振りながら器用に滑って近付いてくる。



「何?トガの家、この辺なの?」

「つぅか、ここだな」

「アパートなの?一人暮らし?」

「そ」

「ふーん。事情ありげ?」

「別に深い事情はねぇよ」



そう言えば、ふーん。と返す。
コイツは遠慮知らずだと思われてるけれど。実はちゃんと線引きの出来る女だ。しかも、それを感じさせないのだから付き合いやすい。



「お前はこの辺だったか?」

「ううん。ちょっと用事があったから。ついでに遠回りしてみようかなぁ、と」

「変わったヤツ」

「トガに言われたくない。でもさ。知らない道とかってワクワクしない?」



こうやってトガの家にも来れたんだし。



「じゃあ寄っていくか?」

「ヤー!セクハラな響きぃー」

「ハ。お前に何かしようなんざ気、起きやしねぇ」

「………」

「イデッ!ローラーで蹴るなっ!」

「何か、何となく」



んじゃあな、と手を振って別れようとすれば、制服を掴まれた。

2009/11/01(Sun) 22:54 

◆戸→鈴A 


「何だ?」

「ねーねーアレ、トガの?」



指さしたのは、アパートの空きスペースに置かれていたバイク。


「あぁ」

「へー!すごーい!」




カッコいいー!とはしゃぐ鈴音に、嬉しくなって。

乗ってみるか?なんて言葉を漏らした。


あ、しまった。と思った瞬間には鈴音はキラキラと瞳を光らせて。



「うん!」


と笑顔で承諾した。





今更断れるワケもなく。ホラ、とヘルメットを小さな頭にすっぽりと被せて。


「ありがとー」



バイクの後ろに飛び乗って。ギュッとしがみついてくる。
頭がクラクラした。


離れろ、なんて言えるワケもなく。
細い腕が腰に回って。密着した体に鼓動が早くなる。助かったのは、胸の感触がイマイチ感じないコトだろうか。少し残念だ。いやいや違うだろ。平常心だ平常心。頑張れ、俺。


「トガ?」

「あぁ…わり。ちゃんと掴まってろよ」



そう言って、アクセルをふかす。
エンジン音がこだまして。鈴音が興奮したように声を発して。



そのまま加速して、なるべく車通りの少ない道を走る。





「ヤーっ!!すごいすごい!早い!怖い!楽しかった!!」


小休止、と止まってジュースを渡せば。鈴音が頬を蒸気させながら喜ぶ。
苦笑しながら自分もジュースを流し込んだ。



「すごいねぇ!トガはいつもこうやって走ってたんだ」

「まぁ、最近は少なくなったけどな」

「スケートとは違うよ!怖かったけど気持ちよかったぁ!」



そりゃ違うだろうな。
そう笑ったら、鈴音の携帯が鳴りだす。


「はーい……あっ!ゴメンっ!忘れてた!………ううん、行く、大丈夫。もうちょっと時間かかるけど………うん。ん、………はーい、ゴメンね。先見てて!」



「………」



バツが悪そうに携帯を閉じる。そして舌を出して。


「約束忘れてた…」

「まだだったのか?…それは悪かったな」

「ううん!トガが謝ることないじゃん!乗せてくれて嬉しかった」

「…送るか。ホラ乗れ」

「ありがとう!」


そう言って空になった空き缶をゴミ箱に投げる。


「で、どこ行けば良いんだ?」

「セナの家」

「………ラジャー」

「モン太とセナと、次の試合のビデオ見るって約束してたの」



ふーん、と相槌を打って。スピードを上げる。




ふーん。セナと。
ふーん。セナの家で。


ふーん。




ゆっくりとスピードを落とす。




「意外」

「ハ?」

「トガって黄色でもちゃんと止まるんだ」



スピードを落とした理由はそれだけじゃないんだが。


「どうせ赤になるんだ。黄色で止まった方が楽だろ」



どうせ。思いの行方は。


折角忠告してくれてるんだ。止まった方が良いに決まってる。





でも、折角だから。もう少し。もう少しでいいから、このままで。









おわり。

2009/11/01(Sun) 22:54 

◆黒→メグ 


赤はアクセル全開で進め。







暗い帰り道。普段なら寄り道せずに真っ直ぐ帰るんだが、確かタバコきれそうだったな。そう思ってバイクを自販機に横付けした。それがアタシの運の尽き。





「ああああああ!メグメグメグ!!」

「……あ?」


何やら大声で人の名前を呼びながら走ってくる男。
知り合いだ。……はっきり言って知ってるだけで、友人ですらない。




シカトして、自販機の口からタバコを一箱取り出してバイクに跨る。



「……って何してんだい!アンタっっ!」

「良いから!俺ケーサツに追っ掛けられてんだよォ!」

「知るか!さっさと捕まってしまえっ」




その男は断りもなくアタシの愛車の後ろに座って。早く出して、とせがむ。



「だってよぉ。何かカツアゲされてるヤツ居たから珍しく助けてやろうと喧嘩して、んで助けた礼を貰おうとしたらカツアゲと勘違いされて…」

「………」

「んで、ちょっと腕振り上げたらサツに当たって、コームシッコーボーガイだ!とか叫ぶから逃げて来たんだよ」

「………さっさと降りな」

「居たぞ!こっちだ!」



げ、と男が叫ぶ前にアクセルをふかして走り出した。

警官の声に条件反射で逃げるとは、大概アタシも善良な一般市民ではないねぇ。



「おー早ぇー!」

「ちっ。」

「なぁ、折角だからこのまま流さねぇ?」

「調子乗るんじゃないよ」



ノーヘルの2人乗りでスピード違反。
追っ手が増える。




「突っ切っちまえ!」

「アンタに言われるまでもねぇっ」




鮮やかに輝く真っ赤なライト。鳴り響くクラクションにサイレンの音。気にも止めずにアクセルを全開まで。





「さっすがぁ!鮮やかなコーナリング!!」

「降り落とされちまいなっ!!」




んなヘマしねぇよ!
さっさと落ちなっ!






流れる街の灯り、うるさい音、不本意な共犯者。




「早くって気持ちいーなっ」






ほんの少しの共感。
さて。どこまで逃げようか。







おわり。

2009/11/01(Sun) 22:52 

◆十→まも 



青になっても進めない。






ぷらぷらとバイクを走らせる。
一度家に帰ったんだが、いつものコトというか何というか…まぁ、オヤジにムカついて。
気分転換だ。戸叶の家にでも行こう。安いビールと安いツマミを持って。途中で黒木を拾って。



そうコンビニに寄ろうとバイクを止めれば、丁度よく扉が開いて。
出てきた人物に目を見張る。



「あら?十文字君?」

「……どーも」



こんな夜中に、似合わない。タバコをふかしながらたむろする少年。酔っ払いのオッサン。安い口説き文句を持って呼び込みする夜の店員。


その中で、陽の光を思わせるような彼女。似合わない。




「十文字君も買い物?」

「えーと、はぁ。」

「そう。一人なの?危ないわよ、高校生の一人歩きは」

「いやいやいや。アンタもだろ。アンタこそ一人なのか?」

「うん。友達に宿題分かんないから教えて、って言われて…気付いたらこんな時間になっちゃった」

「………」

「十文字君?」



黙って睨む俺に、どうしたの?なんて聞いてくるから、盛大に溜め息をついてやった。

2009/10/31(Sat) 18:22 

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