纏本

□PHASE.7『戦場』
2ページ/9ページ






「地球連合軍第49隊隊長より入電……」

オペレーターの言葉にキッドはなんだ、と短く問い掛けるとオペレーターは少し躊躇するように口を開いた。

「…自軍MS隊と、こちらの…MS隊を……共同進行させる、と…」

その内容にキッドは、は?と間抜けな顔でオペレーターを見た。
余りにも突拍子のない突然の作戦内容にキッドはおろかブリッジにて聞いていた他の面々も正気か、と表情が歪んだ。

「なぁ、アサト准将……あっちの奴らはふざけているのでしょうか?」

「……正気、ではないな…」

怒りどころか呆れが出る相手方の作戦内容に思わず総指揮官に聞いてみるとアサトもまた老けた顔を険しくさせて窓から見える地球連合軍艦隊を睨む。

「とてもじゃないが馬鹿げた内容だ…訓練もせずいきなり編隊を組んで実戦に挑むなど」

舌打ちが零れてしまう。
これだけふざけた内容もだが、協力を強要して呼んでおいて合わせる気がさらさらない地球連合に疑惑に似た苛立ちが湧いた。

「だが言う通りにするしかあるまい…我らオーブは地球連合と同盟を結んだのだ……拒否する理由は既に潰えた」

アサトの一喝で再びブリッジに緊迫した空気が流れ、キッドは流石だなと頷いた。
巨大な勢力である地球連合と同盟を結んだ今、オーブに抗う術は当然ある筈もなく、ある程度の要求は呑んで快く協力しなければならない立場にある。
トダカ率いるタケミカズチもまた、地球連合と共にザフトに対して戦争行為を行わなければならない。
自分たちもまた、同じようにザフトと戦わねばならない立場だった。

「各オーブ隊に伝令!MS隊は各機出撃し、連合軍のMS隊と共に前進されたし!!」

地球連合軍第49隊隊長エヴァン・レ・ハーネスは相当な切れ者だと聞く。
また、ブルーコスモス系統だという噂もある。
どちらにしろ此処で下手な反感を売るのは賢明な判断ではなく、また此処で的確に従った方がオーブ軍に被害が及ぶのを最小限に出来るかもしれない。
そう判断したキッドは気持ちを切り替えるとそのままアサトを見る。

「オレも出ます…」

「ならん…許可は下ろせんよ」

せめて自分も力になりたいと言い出した言葉は即答で否定された。
何故、と噛み付こうとしてアサトの眼がキッドを捉えた。

「貴官の力を侮る訳ではない…だが、貴官は士官だ……此処で易々と出て傷を負っては指揮に影響が出る」

その的確な指摘にキッドは確かに、と内心同意する。
士官が出撃して直ぐに負傷しました、では指揮系統の低下を促すのは軍の士官学校で学ぶ事だった。

「それに、貴官の力の発揮場所は此処ではない……力を温存しておけ」

激励とも、宥める事にも似た気遣いはキッドの荒ぶる心を落ち着かせた。
此処で自分が戦う前に、相手の出方を見て最善の策を行使すべきだと思い改めてキッドは座席に戻った。

「全機、出撃いたします!!」

オペレーターの声にアサトは視線をキッドから外の景色に移すと一瞬の呼吸の後に叫んだ。

「全機出撃!!」

キッドはこれから始まるであろう戦争に暗い気持ちが胸に残った。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ