纏本

□PHASE.6『鏡光』
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「クソッ!!なんだってこんな時に!!」

受話器を投げるように元の場所に戻すとキッドは立ち上がって軍服を羽織り、携帯電話を鷲掴みに部屋を飛び出した。
廊下を走りながら携帯の履歴から特定の番号を探すと耳に宛がう。

「フリーダムとアークエンジェルはどうしてる!?攻撃はするなっ!!トダカ一佐が居るなら彼に伝えろ!!対応は慎重に、とな!!」

用件だけ伝えると通話を切って格納庫に入る。
そのまま自分のムラサメに駆け寄ると、意外な人物が姿を現した。

「エクレール!?なんでお前が此処に!?」

オーブ軍服を身に纏うエクレールが驚くキッドに苦笑浮かべると徐に腕を掴んだ。

「っ、離せ!!オレは出るぞ!!」

乱暴に振り払おうとするも意外に力強く掴まれているのか腕は離れず、エクレールはそんなキッドを宥めるようにもう片方の手で肩に置いた。

「……キッド…ダメだよ」

「………お前っ、知ってたな!?アークエンジェルがアスハ代表を拉致するって!!」

憤慨を隠せずエクレールに詰め寄ると、彼は尚も食い下がらないようにキッドの眼を見る。
意思はまだ微弱だが、その瞳には微かに前大戦で戦った頃の輝きが芽生えていた。
エクレールはキッドが落ち着いたのを判断すると掴んでいた腕を離して口を開く。

「……行かせてあげて…オーブが、またあんなことになっちゃう前に…」

穏やかな口調だが、そこには確固たる意思が宿った言葉だった。

「それは、お前が軍服を着てまで正しい事なのか!?」

「……今だけだよ、今だけだから…ね?」

苦笑浮かべながら宥めるエクレールにキッドは痛々しく破顔する。
きっと決死の想いで此処に来ただろうエクレールに、そうさせたアークエンジェルが忌ま忌ましく感じられた。
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