纏本

□PHASE.3『裁罪』
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「あいつの日課か?」

子供たちのはしゃぎ声をBGMに青空を窓辺から眺めながらキッドが呟くとリアンが呆けた表情でキッドを見つめる。
キッドがそんな視線を痛いと感じたのか徐に口を開いた。

「だから、エクレールだよ……最近慰霊碑のとこに行ってんじゃん」

「ああ、エクレール君ですか?」

ようやく合点がいったように言うと隣の椅子に腰をかけてキッドの次の言葉を待った。

「珍しく外出るようになったと思えば、行く所は慰霊碑の場所だけだ……日課か?」
以前よりも外出する頻度が増えた事には増えたが、行く所は決まって慰霊碑。
社交性が回復しつつあるのは嬉しいが、余り過去を引きずり過ぎるのも問題だ。

「でも、良いことじゃないですか……前までは孤児院の部屋から殆ど出なかったんですから」

「……………」

確かにな、と頭を掻くと煙草取り出して一本口にくわえる。
回復の兆しはある、望みもまだ可能性は低いがある。
どうするかはエクレール次第だが、こちらからはどうしようも出来ない。

「とりあえずは、軍に戻るかな…」

「戻るにしても、仕事が大変なんじゃ…」

軍に戻ったら仕事が多過ぎて孤児院には暫く戻ってこれない。
このご時世で、軍に戻れば書類処理ばかりだろう。
それもキッドは体力を使った仕事は得意だが、書類処理などの事務職は得意とはいえない。

「まぁ、な……暫くは此処に戻って来れなくなるよ」
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