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□PHASE.3『艶笑』
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「イゾルデ、ナイトハルト、撃ぇっ!!」
セライナの怒号と共にユグドラシルの副主砲とミサイル数発が放たれた。
イゾルデを易々と避けた紅い機体にミサイルが交錯すると共に幾つもの閃光を輝かせる。
「やった!?」
「駄目です!!来ます!!」
爆炎の中から再び一直線に突き抜ける紅い機体の様にセライナは歯噛みした。
(速いわね…それに、あの動きは間違いなくコーディネイター)
セライナの胸中でマズイと警鐘を鳴り響かせる。
少なくともその動き方は常軌を逸していた。
「ショウとゲイルは!?」
「……艦長……」
「っ…」
たった今宇宙に同時に咲いた閃光の華にミシェルは絶望を垣間見たかのような形相でセライナを見る。
呆気なく散った部下の命、それを奪った紅い機体。
「…くっ、トリスタン照準!!アンチビーム爆雷発射!!」
紅い機体は野太い火線を避けながらビームライフルで牽制射撃を放ってきている。
セライナの胸中に渦巻き鳴り響く警鐘が、大きくなった。
「エクレールを呼び戻して!!今すぐに!!」
並大抵のパイロットが手に負える相手でない事が、今漸く部下二名の命を代償に判らせた。