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□PHASE.1『銃剣』
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「ねーぇ…アギト」
赤服の少年に走り寄る少女に、少年は今漸く気付いたかのように足を停める。
白髪に近い髪色のアギトと呼ばれた少年はただ無言で耳を傾けた。
「…………」
「だから、新しく二人が配属されるんだけど…」
「……また戦いが始まるのか」
藍色の短髪の少女は蚊の鳴くような声で呟いたアギトに表情が暗くなった。
「…宣戦布告のこと、考えてるの?」
アギトは肯定するかのように少女から目を逸らして通路の先に向き直る。
「……何も変わらない…またあの殺しあいが始まる」
脳裏に焼き付く、海辺の砂浜から見える空から降る光。
ただ、前を見据えて虚空に問い掛ける。
――俺達はいったい何をしてるんだ?
「あれ?」
背後から聴き覚えのない声がすると、アギトはふいに振り返った。
藍色の髪の少女も同様に背後に振り返り、その声の人物を見た。
甘栗色の長髪を後ろで一ツに縛った柔和な顔立ちのザフトの白服を着る男と、黒い短髪の幼い面影をした赤服の男。
先ず最初に抱いたのは…
――……女?