纏本

□PHASE.4『激動』
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「やはり君は私の思った通りの存在だったよ」

特徴的な若干低い声色をしたウェーブがかった黒髪を腰の位置で揺らしてソファーに座り込んだ。
テーブルの上にはガラス製のチェス盤と、盤と同様のガラス製の駒が不規則な位置に並んでいる。

「南米の件については、君の協力があったから事が良く進んでくれた」

黒髪の青年は黒の駒を一つ摘むと一つのマスに置く。
向かい側のソファーにて豪顔不遜な態度を示す姿勢で寛ぐ、青年とも少年とも判断が利きにくい年代の男をその琥珀色の眸が細い瞼から覗いた。

「例のフリーカメラマンの事もこの進行に良く働いたようだね」

男は甘栗色の短髪で、前髪をカチューシャで上げて左右に別けている。
ザフトのトップクラスとも言える白の軍服を纏い、胸元をだらしなく開けていた。
端正な顔立ちとその光を燈さない暗紫の双眸は青年を無関心に見据えている。

「だが、やはり今後の予定に彼女の存在は邪魔だ」

男は沈黙を貫く中、漸くゆっくりと右腕を伸ばすと白の駒を手に取った。
細く長い、男にしては綺麗な作りの指で白の駒を弄び、その駒を眺めるように見ている。

「君ならどうする?白の女王(クィーン)を…」

青年の問い掛けから暫く沈黙が続く中男はクィーンの駒を指で弄び堪能すると、飽きたかのように握った。

「君になら、道を示せれるのかな?」

再び問い掛け、その返答はガラスが鈍く割れる音で返ってきた。
男は握りこぶしをチェス盤の上に持っていくと、ゆっくりと手を開いて中から粉々になったガラスの破片を駒が佇むチェス盤に降り懸かった。





……マサト・グラナイツ……





【PHASE.4】
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