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□PHASE.4『暴喰』
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「――何の用だね?私は今就寝中なのだが…」
薄暗い質素な部屋の中で、唯一存在を許された便器とベッド。
その内の一ツであるベッドの上で身体を横にする男が一人居た。
男が、低い声色を部屋の中で響かせる。
それに呼応するかのように、唯一の出入口である鉄扉が開いて薄暗い部屋に光を差し込んだ。
開いた出入口から、女が一人、部屋に入り込んだ。
銀色の髪を後ろで縛った、赤い目の女。
女はザフトの赤い軍服を身に着けている。
男は横になった姿勢から上半身を起こして女を見た。
「……赤か……これはまた珍しい訪問者だな」
侮蔑や皮肉ではなく、ただ純粋な感想を口にだしながら男はため息を吐く。
女はそんな男の心中など知らず、徐に口を開いた。
「貴方に聞きたい事がある…」
「なんだ?」
軍事裁判ものの犯罪を犯した男が、自分にいったい事など何があるのだといいたげに微かに笑いながら女を見る。
「マサト・グラナイツの事で…」
男の表情が変わった。
今までの飄々としたのらりくらりな空気から、歴戦の猛者への空気に変わる。
戦場でもないのに戦場の緊張感が部屋に充満し、肌に突き刺すような感覚が痛い。
「……"魔王"、か…懐かしい響きだな」
男はベッドの硬い布の感触を味わいながら壁に背をもたれる。
「……そうだな…奴を顕す言葉は、酷く難解で不確かなものしかないが…あるとするなら――」
――負の側面を集約したような男だ…。
【PHASE.4】