纏本

□PHASE.9『爪痕』
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「っ……なんだ…あの機体」

翼を持つ機体が戦場に割って入ると見境なく攻撃を開始していた。
正確にしかし迅速に武装と頭部だけを破壊していく翼の機体にリンネは内心で荒ぶる気持ちが微かに芽生えるのを感じた。

先程までリンネを集中的に攻撃してきたカラミティ、レイダー、フォビドゥンも翼の機体に獲物だと言わないばかりに向かい、そしてリンネがあれ程苦戦した三機を軽く一蹴している。
翼の機体はそれだけに留まらず、背と腰の砲門から盛大な火力を吐き出してボズゴロフ級の武装ハッチを破壊していく。

圧倒的な力を見せ付ける翼の機体の目的が分からず、内心困惑が渦巻いた。

「………なんだ、あの機体は…!」

操縦桿を握る手に力が無意識に篭り、モニターを見る両目が細まった。

「――……なんだお前はっ!?」

シグーの推進を全開にして翼の機体へ真っ直ぐ突き抜ける。
リンネのシグーに気付いたかのようにゆっくり振り返る翼の機体に、右腕に持たせた重斬刀で斬りかかる。

「……っ!?――」

刃を持つ腕を振り切った目の前に翼の機体はおらず、それよりも先に離れた位置で飛来するといつの間にか抜いたサーベルを構えて真正面から突っ込んでくる。
まずい、と判断する前に衝撃がコクピット内に伝わり、遅れて反応しながら機体を振り向かせると既に翼の機体はウィンダムの大部隊へ向かっていた。

「…っ……くっ!」

エラー表示が出るモニターを見て、重斬刀を握っていた腕が無いのを知る。
余りにも歯牙にかけられていない事と歴然の力の差を見せ付けられて顔が歪むのを自身でも分かる。
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