yu-yu-hakusho K
□silent
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≪サイド 蔵馬≫
「はぁ、はぁ……」
「どうした〜ぁ?妖狐蔵馬さんよ〜ぅ?」
ボタボタと、己の足から流れ出る血が足下の植物を紅く染める。
流石、指名手配犯、といったところか。
「おいおい?もう終わりかぁ〜?………ん?グッ、ぐぁぁぁぁぁ!!!」
その妖怪は自分よりも幾分か強かった。
幽助に言ったら怒られるような賭けをしてなんとか始末した。
煙鬼に連絡しようと思ってもケータイが破壊されてしまってはしょうがないと思い、渋々怪我の応急処置を施してから政府に行くことにした。
政府に着き、煙鬼のいる部屋に入り彼の「おー、お疲れさん」という声に返事をしよう思った、が、出来なかった。
「………。………?」
声が、出ない。
喉元に手をやる。
「?どーした」
煙鬼がソファから腰を少し浮かせる。
「ちょっと大丈夫?」
孤光がテーブルに酒を置き近づいてくる。
「………………。」
『声が出ない』と、唇を動かす。
彼らだったら唇を読むことができるだろう。
すると、思ったとおり二人共目を少し丸め、孤光がオレの頬を摘む。
「は?声が?」
「…….。」
敵意のない睨みを孤光に向け、軽く頷く。
すると孤光がさらに蔵馬に顔を近づけてきて目を覗きこむ。
(……お酒臭い。)
むぅ、と思いながらもじっとする。
「ふーん。」
「時雨のヤツに診てもらえば……」
煙鬼にそう促され、蔵馬は顎に指を添える。
しばらくその体制で固まっていたがやがてコクリと頷いた。
煙鬼がそう提案し、百足を探し始めて2日経った。
やっと、百足が見えたというところまで来て疲労困憊だった身体が傾きかけ、マズいーーと思ったところで、飛影がやってきた。
「おい。」
なんとか倒れずにすみ、蔵馬がホッと息を吐いていると、不機嫌そうな声がかかった。
少し怠そうに首を動かし小さな黒い物体を見る。
「何やってんだ。」
見ると本当に彼は、不機嫌、という言葉が似合うような表情をしていた。
大方、軀にでも頼まれたんだろう。
『キツネが来るから迎え行ってこい』等ーー。
確か煙鬼が百足に電話をしているハズだから、軀は勿論知っているだろう。
で、蔵馬と旧知の仲のパトロールで疲れきっていて、尚かつ何も知らない飛影に頼んだんだろう。
彼のことだからソレで不機嫌にでもなったんだろうなぁ、と呑気なことを考える。
(あ〜、説明するの少しかったるい…)
うんうん唸っていたためか、飛影がスタスタと歩いてしまっているのに気づかず、慌てて彼の後を追った。
駆け足で寄ったからすぐに蔵馬は飛影のもとに辿り着き歩調を彼に合わせて歩いく。
すると突然ピタリと前を歩いていた飛影が歩を止める。
(……?)
不思議に思いながらも蔵馬も合わせて歩きを止める。
「……貴様……。妖気が弱まっているぞ」
(え。)
気が付かなかった。
振り向いた飛影の表情は呆れともとれるが、少し不安げなカオでーー。
その顔を見ていると、あ、飛影ってそういうところすこし幽助に似ているなぁ、と魔界で妖気が弱まっているのに危機感のないことを思っていた。
そばに飛影がいて安心しているのだろうか。
彼は幽助と同じくらい強いから。
(幽助……会いたいな)
身体がフラフラしてきた。
あ、倒れる。
と思った時には既に襲ってくる睡魔に身を委ねていた。