yu-yu-hakusho K

□レイン
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(あ、)


パソコンから目を離し窓を見ると窓には水滴がついていた。

(雨、かーー)

どうしよう。傘持ってきてない。



時計を見ると午前0時23分。

残業を終わらせ今のうちに帰らないと酷くなりそうだ。

それに終電もギリギリだ。



パソコンを閉じ、素早く片付けを済ましオフィスを出る。

鍵をカウンターに戻して会社を後にする。




ザァァァーーー

(う、さっきより強くなってる)



駅までは人間に見える速度で走るとーー5分ぐらいかな。

(面倒だけど……濡れるのはイヤだな。)





鞄を脇にはさみ、できるだけ人の通らない、雨の当たりにくい道を駆ける。




(ーーん?)


走り始めて10数秒ほどの細い路地裏で雨に濡れた小さなポリ袋を見つけた。

しゃがんで袋を指で摘み、匂いを嗅ぐ。

(これはーー)



ふと、背後に気配を感じた。

振り向くとそこにはフードを被った人間2人。

深くかぶっていて特徴はわからなかったが、体つきからしてどちらも男だろう。


嫌な予感がする。

それも面倒くさそうな、予感。




この袋には麻薬の匂いがついていた。

おそらくここらへんで取引していたか、誰かがここに捨てたか、だ。

どちらにしろ完全な違法だ。


今回は妖怪が関わっていないだろうから、とても面倒だ。

別に妖怪が使用していたって支障はない。

妖怪と人間との間での取引なら妖怪を始末し、人間を霊界にでも任せておけば平気だろう。


だが、この袋からは妖気もその気配すらない。

人間同士の取引だ。

いくらコレが魔界に関わっていなくてもオレは妖怪だ。

下手に手を出すことが出来ない。


どうしよう。



あれこれ考えていると、2人が近づいてきた。

ジリ、と1歩足を踏み出すごとにオレは1歩足をひく。

男たちは何も言わない。口を開かない。



ザァァァーーー

いつの間にか雨がまた酷くなっている。

濡れないようこの道を通ったのに、ずぶ濡れだ。

しかもこれから駅まで向かってももう間に合わないなー、とオレは呑気なことを考えていた。

今日が雨じゃなかったらこんな男たち始末できたのに。

いや、まず雨じゃなかったらこんなことになってないか。

こんな状況で溜息をつきそうになった、




その時ーー






背後から口を布らしきもので塞がれた。


瞬間、ツンとした香りがする。




「ぁ…………」

なに、と思うまもなく己の身体から力が抜けてゆくのを感じた。

それに逆らう術なくして冷たく濡れたコンクリートに身を打ちつける。


それと同時に襲い掛かってくる睡魔。

薄れ行く意識の中見えたのは、恐らくオレに薬を嗅がせたであろう奴だ。

暗い。

空も、だが、そいつが黒く見える。



それ以上のことを考えることなくオレは目を閉じ意識を失った。
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