yu-yu-hakusho K

□silent
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プルルルルーー
プルルルルーー
プルルルルーー
プルルルルーーピー

『只今電話に出ることができません。御用のあ』

ーーガチャン


(なんで出ねぇんだよ)








蔵馬が電話に出ない。

それも1週間前から。



ーー最後に蔵馬に会ったのは2週間前だ。

その時はいつものように喋って酒飲んで………寝そ、のあと起きたら『仕事があるから行きます』の置き手紙があって……。

なにかあったのか、と思うような様子ではなかった。

蔵馬は隠すのが上手いが俺には全てお見通しだ。

なにかあったらすぐに気づく。

だから、おかしい。

1週間前に電話をして、その時も特に変わりがなくって。

メールをしてみたけれど返信ナシ。

先日家にいったが留守。

黄泉にも訪ねてみたが来ていないとのこと。

(マジでどーするべ)

頭を抱え5本目になる煙草に手を伸ばした時ーーー



ピンポーン




インターホンの音とともに蔵馬の妖気。

(心配させやがって!何処にいて何してたか拷問じゃあーーー!)

と、息巻きながらドアノブを回しドアを開ける。

「グォルァァァ!今までなにして…た…」

はた、と気づく。

訪ねてきた蔵馬の様子がおかしい。

俯いている。

いや、別にそれはおかしくない。

パッと見いつもと同じ様に見えるが、どこか違和感。

「………。」

「蔵馬?」

名を呼ばれた蔵馬は顔を上げ幽助と視線を合わせる。

口を動かす。

「………。」

喋っているように見える、が、彼の綺麗な声はしない。

(?)

「……蔵馬?」

蔵馬の口元に耳を寄せる。

が、吐息のほかに何も聞こえない。

「?とりあえず、あがれ」

そういって促すと蔵馬は申し訳無さそうに微笑んで俺のあとについていった。







ひとまずソファに二人して座りコーヒーを口にする。

落ち着いたところで幽助が口を開く。

「それで、どーしたんだお前」

幽助が蔵馬の表情を伺いながら問いかける。

すると蔵馬はソファから立ち上がりメモ帳とペンを取り幽助の隣に座り直す。

(……?)

蔵馬はメモ帳にサラサラと綺麗な字で文字を書く。

書き終わったのかペンを置き、メモ帳を俺の方に向ける。

「な……っ」

驚きで幽助は目を見開いた。

そこに書いてあったのはーー

『声が出なくなった』

「な、ど、どーゆーことだよ」

呆然としながら蔵馬を見る。

するとまた、蔵馬は紙に文字を書き始めた。

『1週間ほど前に政府から指名手配中の妖怪を始末しろ、と頼まれたんだ。』

「じゃあその妖怪に?!」

俺の問に蔵馬は頷いた。

『ケータイもそのとき使い物にならなくなってしまって……すまない』

「謝んなくていいから!他に怪我とかねぇか!?」

蔵馬の肩に手を置き、顔を覗き込みながら聞くと彼は首を横に振った。

(嘘だ)

おそらく、傷は癒えているのだろう。

だが、怪我はしたはずだ。

俺を騙せるとでも思っているのか。

だが、今はその問題じゃない。


「ちゃんと……元に戻る……よな?」

縋るように聞く幽助に蔵馬は苦笑しながらまたも首を横に振る。

『それはオレにもわからない』

(そんな……)

幽助は俯くと彼の肩に置いた手の力を強める。

「…く、……そ…」

「………っ」

びっくりしたのか蔵馬は丸い目をさらに丸くさせたがすぐに目を細め幽助の背に手を回す。

大丈夫、とでもいいたげに幽助の背を撫でた。




もしかすると、一生彼の声をきくことができないかもしれない……そんなの御免だ。

絶対に治してみせるから、と幽助も蔵馬の背に腕を伸ばし彼を強く抱きしめる。

だから、とーー

「諦めんなよ?」

更に強く腕に力を込める。

「…………。」

互いに抱き合っているため表情がわからないが、きっと彼は今ーーー
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