yu-yu-hakusho K

□優しさと
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魔界都市……癌陀羅。




「……増えてる」

蔵馬は机に置かれた資料の量の多さにポツリと呟いた。

3年に一度行われる魔界統一トーナメント。

今年で第6回目となる魔界統一トーナメントなのだがーーー

その参加人数が毎回増えつつある。

参加者からみればそれほど楽しめるのだろうが準備をする蔵馬にとってはいい迷惑である。

(そう言っても仕方がないか…)

頭が痛むのを堪え、参加者全員分の予選ブロック番号を作成するため作業を始める。













蔵馬が仕事に取り組み始めてから数時間が経った頃ーーー


ーーーコンコン

黄泉が仕事をしている蔵馬の為にと、コーヒー片手に彼のいる部屋を訪れるーーが、

『…………。』

(?)

部屋にいるはずの蔵馬の声がしない。

不審に思いドアを開ける。

「蔵馬?入るぞ」

一応声をかけてから足を踏み入れる。

机と椅子、ベッドと本棚しかないシンプルな部屋。

その部屋の主は椅子に座っていた……のだが。

「すぅ……すぅ……」

黄泉の耳は、机に突っ伏していた蔵馬の寝息をとらえた。

(そういえばここのところ呼吸が少しではあるが乱れていたな。)

コーヒーを棚の隙間にそっと置き、蔵馬に近づく。

寝ている相手を起こさぬよう注意をはらって彼の額に手を当てる。

(!………っ)

想像していたよりも遥かに熱い。

恐らくこれは……

「魔界の風邪……か」






時の止まった身体。

蔵馬は幽助と共に土地を移動しながら人間界で暮らしている。

時々魔界の政府に呼ばれながら。





2週間ほど前、幽助たちが癌陀羅まで来て暫くは魔界で体慣らしする、と雷禅の国へ向っていった。

黄泉は、蔵馬も幽助たちと暴れるのかと思ったが前回の優勝者、煙鬼に仕事を頼まれていたらしく癌陀羅に残った。

その時から既に呼吸がおかしかったが蔵馬に睨まれた気がしたため何も言わず……。




(今回こちらに来た時からかかっていたのか。)

魔界の風邪は厄介だ。

蔵馬の薬草を飲めば治りが早いのだろうが……

(本人がこれではな……)

そういえば以前もこんなことがあった気がする。

その時は自分がひいたのだがーー。

蔵馬からの呆れの目を向けられ、マズイ薬草を飲まされ……これ以上思い出したくない。


とりあえず椅子のままではいけないなと、蔵馬を起こさぬよう横抱きし、ベッドへと運んだ。

(妖駄に水とタオルを持ってこさせるか……)

黄泉は妖駄を呼びにそっと部屋を出る。
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