NL*短
□同化
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紫色に渦巻いた黒の宇宙の下に、私は知らない惑星の上で寝ていた。
目を覚ますと、目の前には、ぷかぷか浮かぶ玩具にどこか見覚えがある家具。
前を通ったチェアを見て、意識がはっきりと蘇った。これは紛れもなく、まぐろ君のチェアだ。
「エコロ」
泣きそうになる。膨大な不安に心は支配される。
エコロ、あなたは一体。
「皆をどうしたの?」
「消しちゃった」
腰を上げ、ゆっくり背後を振り返る。透き通る身体を浮遊させ、彼はじっと私を見ていた。哀しそうな、狂気にも満ちた瞳。
「僕は、ただ君が欲しかった」
近づく彼の身体を押し退けようとした。だが、手は身体を通り抜け、行き場をなくす。
「お願いだから、もうやめて。皆を、皆を返して」
熱い液体が頬をつたる。それは止まりを知らず、ただただ流れ続け私の心を蝕んでいった。
私の体に密着させたエコロは、そっとその涙にキスをした。冷たい氷の膜が、頬に這うよう。
「りんごちゃん、人間は愚かだよ」
エコロは自分の身体を、私を包むようかのように溶かす。まるで溶けたチョコレートが身体を這うようだった。
「ただ自分の身体の一部を絡ませ、押し込むだけで、つながっていると、同化していると勘違いをするんだ。本当の同化をあいつらは何も知らない。一生、人間通しでは互いに一つになることなんか不可能なんだ」
熱い液体のようなものが、服をすり抜け、肌を包む。
どうして。
息が、荒れる。身体が、熱い。
「ふふ、きもちい?」
「やっ……やめ、あっ」
意識が断片的になる。エコロの身体が、私の中に溶け込んでいく。生温いものが、私の全てを蝕んでいった。
「りんごちゃん、一つになるってどういうことか、教えてあげるよ」
「エ、コロ、お願いっ、やめてっ……」
途端、激しい白光が私を襲った。身体の感覚が無くなり、まるでエコロの中に吸い込まれるように、私は一種の衝撃に落ちた。
『はあ、心地いいなあ、愛しい人の身体って』
遥か遠くから、エコロの甘い声が響いた。
私の身体を奪ったエコロは、赤い髪を指でなぞり、そっと笑った。
『これからはずうっと、僕と君はひとつだよ?』