絆道

□第17話
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真っ白な空間に、サスケはいた。
そして、向かい合うように同じ空間にいたのは、ボロボロと涙を流し、憎しみに表情を歪めるサスケによく似た小さな男の子。



――――誰だ?



サスケの問いかけに少年は答えなかった。
ただ涙を流していた少年は、唇を薄く開く。



『…父さんも母さんも、死なずに済んだんだ…』


――――昔の…オレ…!?


『結局…力が無ければ何も出来ないじゃないか…僕に力が無かったから…。
一族は滅んだんだ…みんな殺された…。
そして、あの子…ユウも傷付いた…。』



少年の懺悔にも似た独白。
血を流して倒れる父と母が、そして大蛇丸との戦いに敗れ、瞳から光を失っていくユウの姿がサスケの頭に蘇る。



『いや……お前が見殺しにしたのだ。
ただ見ていただけだった……。
力さえあれば……。』



幼い自分は、歪んだ笑みを浮かべると、その片目を大蛇丸の瞳に変え、語りかけてきた。








「うっ……」



現実のサスケはアザと悪夢に苦しめられ、呻く。
そして、そんなサスケのすぐ傍で、彼を守ろうと木ノ葉が誇る第十班……シカマルら3人が音忍三人衆と対峙していた。



「いの…どうして…?」

「サスケ君の前でアンタばっかり、いい格好はさせないわよ――――!」

「またウヨウヨと…木ノ葉の小虫が迷い込んできましたね」



ギロ、ドスに睨みつけられたチョウジは半泣きになる。
元々彼は進んでこの場へ躍り出たわけではなく、シカマルにマフラーを引っ張られ、参上した次第であった。



「2人とも何考えてんだよォ〜〜!コイツらヤバすぎるって!食われるって!
シカマル…マフラーはなしてよォ〜〜〜!」

「放すかバカ!めんどくせーけどしょーがねーだろ!
いのが出ていくのに男のオレらが逃げれるか!死ね!」

「巻き込んじゃってゴメンね――――!
だけどどーせ三人一組…運命共同体じゃなーい
それに、アンタだってあの子を放っていけないでしょー?」

「まぁな……」



かつてない強敵と遭遇しているという事態に恐怖はある。
だが、とチラリと音忍たちのすぐ傍で倒れているユウを視界に入れ、激しい怒りを感じているのは事実で。
余裕そうな表情を作りつつ、シカマルの瞳は激しい怒りに満ち溢れ、氷のように冷たかった。



「ま、なるよーになるさ」



だからシカマルは自分の意思で戦いにきたのだ。
勝てなくてもいい、せめて早くユウに治療を施すために。



「クク……お前は抜けたっていいんだぜ、おデブちゃん」



小馬鹿にした笑みを浮かべ、ザクが言い放った一言にチョウジの肩がぴくりと揺れた。



「え?いま、なんて言ったのあの人…。
ボク聞き取れなかったよ……」

「あ!?」

「(…チョウジにそのセリフはタブーだ。2度目言ったら……)」



俯き、そう呟くチョウジに苛立ったように声を荒げる。
未だ俯いているチョウジを睨み、苛立ちを隠せぬ様子で言い放った。



「嫌ならひっこんでろっつったんだよ、このデブ!!」



プチン
チョウジの中で何かがキレた。



「ボクはデブじゃない!!
ポッチャリ系だ!コラ――――!!」



般若の表情で怒鳴り、ポッチャリ系バンザーイ!!と両腕を上げるその勢いに、サクラは圧倒される。



「よ――――しィ!お前ら分かってるよな!!これは木ノ葉と音の戦争だぜぇ!!」

「(ラッキー!切れたァ!)」

「ったく、めんどくせーことになりそうだぜ……!」

「そりゃこっちのセリフだぜ……。」



苛立っている様子のザクに先ほどのビビっていたのが嘘のように怯えず、むしろ闘士すら燃やしているチョウジ。
いつもやる気のないシカマルも静かに怒りの炎を宿しているし、チームの士気はあり過ぎるくらいだと判断したいのは、少し口元に笑みを浮かべた。



「サクラ!」

「!!」

「ユウは必ず助け出すわ。
後ろの2人……頼んだわよ」



頼もしい後ろ姿に、ようやくサクラに笑顔が戻った。
彼女はしっかりと頷く。




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