絆道

□第10話
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あれから二日後。
つまり、ユウとの約束の日。
オレはらしくもなく、待ち合わせよりも30分も早く来てしまった。



「……オレ、浮かれるにも程があるだろ」



ハァー、と盛大なため息とともに頭を抱える。
今日オレは、何故か妙にニマニマした親父とお袋によってコーディネートされた服を着ている。
正直オレにゃあ似合わないんじゃねーかと思いつつ、少しでもユウにカッコイイと思われたくて、なんだかんだ言いつつ着てきたという訳で

服っていや、ユウはどんな格好でくんのかな……
やっぱ、いつも通りのあの忍装束か?
だとしたらそれはそれでいいけど、なんか凹む……。

悶々としていると、トットットット、と小さな足音。



「あぁ!シカマル、待たせちゃってゴメンね!!」

「んあ?いや、全然待ってねーからだいじょう、ぶ……」



振り返った先にいたのは、ユウ。
確かに、ユウだ。
まだ時間前だというのにオレを見つけて走ってきたから、足音がしたのだろう(いつものユウから足音聞こえねーし)

フワリ、と風に煽られ、スカートの端が揺れる。
そう、“スカート”。
フリルのついた、ふんわりと柔らかそうなノースリーブのワンピース
その上は、淡い黄色のカーディガンを羽織っていて、明るい茶色のショートブーツ。




「どうしたの?シカマル??
……あ、これ?」



あまりにもガン見していたため、気づかれてしまったらしい。
恥ずかしそうに顔を赤らめ、スカートの裾を摘む。



「サクラたちがね、たまにはこういう格好もすれば?って……
こういうの、よく分からないから昨日一生懸命こーでぃねーと?を考えてみたんだけど」



その場でくるりと回り、コテンと小首を傾げて「どう?似合うかな?」と上目遣いをするユウ。
いや、文句なしに可愛い……
しかも、自惚れてっかもしれないけど、その服をわざわざ今日、オレのために着てきてくれたっていうのが、なんかこう……
グッとくるっつーか……

すげぇうれしい



「シカマル??」

「え?あ、いや……似合ってる」

「ほんと?」

「っ、ほら、行くぞ」

「うん!」



顔が熱い。
絶対真っ赤になってるこの顔を見られたくなくて、ユウの手を取って大股に歩き出した。
こういう時、サスケのようなモテる男はもっと気の利いた台詞の一つでも吐くのだろうが、そんなの自他共に認めるイケてねー派のオレには無理な話しだ。

チラリと振り返ってみると、ユウはニコニコと笑っていた。
幼馴染みのいのとは違う、落ち着いた表情。
無邪気にも見えるが、どこか違和感が残る、笑顔。

なんでそう感じるのかは分からない
分からねーからこそ、気になるんだ



「シカマル、これからどこに行く?」

「……あ。」



マズッた。
完璧忘れてた。
昨日までに頭に叩き込んでおいたスケジュールはユウの姿を見たとたん、消し飛んじまった。
……ヤッベー、オレ超かっこわりー……



「あー……ユウはどこか行きたいとこ、あるか?」

「んー、特にないかな……シカマルは?」

「オレ?そうだなー……とりあえず商店街の方に行かねー?」



商店街の方ならイベントがやってるかもしれないし、それぞれ欲しい物が見つかれば途中で買うこともできる。
何より女の子のユウが興味を持ちそうな小物とかは商店街の方に行かないとあんまりいいものがない。
なかなかベストなチョイスだとシカマルは思った。

だが、シカマルは鋭かった。
ナルトたちでは捉えられなかったであろうユウの表情の変化に気付き、瞬時にそれは間違いだったと悟った。



「うん。じゃあ行こうか?」

「……いや、やっぱやめとくか」

「え?」

「そんな欲しいモンがある訳でもねーし、オレ人混み苦手……」



だからよ、と続けるつもりだった言葉が途絶える。
その時、シカマルは見てしまったからだ。
ユウに突き刺さる、いくつもの冷たい眼差しに。
ヒソヒソと話す声が、突然大きくなった気がした。




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