絆道

□第19話
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ハヤテの指示により、ユウとガイ以外は上にあるギャラリーへ向かうよう誘導される。



「ユウー!無理しない程度に頑張ってねー!」

「ボクたちも応援してるよ!」

「いの、チョウジ……うん、ありがとう。頑張るね」



ユウの肩に手を置き、ウインクしたいのは微笑んでいたチョウジを引き連れ、ギャラリーへと向かった。



「ユウちゃん!が、頑張ってね……!
き、きっとユウちゃんならだ、大丈夫だと思う!」

「うん、ありがとう、ヒナタ」

「…無理、すんなよ?」



血の匂いがする、と心配そうな眼差しでユウを見つめ、右手をそっと包み込んだキバに苦笑する。



「心配かけちゃってごめんね…キバ…いつもありがとう」

「…本当に無理、すんなよ?」

「オレも微力ながら応援しよう。
なぜなら、仲間として当然のことだからだ。
それに上忍との対戦で本選出場権を獲得するのは簡単なようで一番難しい」

「だー!シノ、お前ユウの不安煽るようなこといってどうすんだよ!?
ほら行くぞ!」

「二人共、ありがとう」



ポンポンと頭を撫で、後ろ髪引かれる様子だったが、キバはシノを引き摺り、ヒナタと共に上へと向かう。



「ユウさん頑張ってくださいね!!
ガイ先生は強いですから!!
ボクも全力で応援します!!」

「頑張ってね、ユウ!」



ガイ先生もファイトです!と熱くなるリー、心から応援していると分かる表情で去っていくサクラに笑顔で応えていると、恐る恐るサスケが近付いてきた。



「ユウ、その………」

「ん?」

「この間は……すまなかった」



この間……。
呪印が暴走した時のことだろうか。
一瞬ピクリと右手が揺れたが、ユウは首を横に振る。



「ううん。あんなの、気にしなくていいよ」

「だが……!」

「大丈夫。あれは仕方ないことだったから」



そう、仕方がなかったのだ。
呪印の暴走が第一の要因だとユウは理解している。

呪印のことだけじゃない。
本当はあたし……サスケに敵意を向けられて当然の立場にいるんだから。



「……だから、大丈夫だよ」

「でも……いや、これ以上は何を言っても納得しねーか、お前は……。」



溜息をついたサスケはユウを真っ直ぐ見据える。
あの時の冷たさなど微塵も見えない綺麗な眼差しに、ユウは少しだけ苦しくなった。



「……無茶はするなよ」



最後に少ないながらも応援し、サスケは上の観覧席へと昇っていく。
カカシと目が合い、サスケをお願いと口パクで伝えると、僅かに目を見開いた。
仕方ないなと苦笑し、頷いたカカシもそれを追ってギャラリーへ行く。



「…ユウ」

「!我愛羅?」

「……お前はまた試験前に怪我しているのか」



どこか呆れたような我愛羅に苦笑し、問題はないことを伝えると鼻で笑われてしまった。
当然だ、という意味だろうか。
そのままこちらに小さく手を振ってくれていたカンクロウとテマリを引き連れ、フィールドから出ていく。



「…本当に、無理すんな」

「大丈夫だよ、シカマル。
もう動くことに支障はないんだし」

「怪我もそうだけどよ…試験前、お前を殴ったのアイツだろ?」



ボソと耳打ちされ、動揺して肩を揺らす。
やっぱりな、とため息をついたシカマルは一度ユウの左手を握った。



「すっげー殺気立ってるし、右手は出来るだけやられねーようにしろよ?」

「その前に使えないし…」

「それでも気をつけとくに越したことねーだろ?
…無理無茶やらかしたら罰ゲームだからな」

「ええ!?ちょ、シカマル!?」

「頑張れよー」



慌てるユウを他所にヒラヒラと手を振り、シカマルは去っていった。
何故だと項垂れるユウの肩をぽん、と叩いたのはナルトだった。



「ユウ、お前本当に気を付けろってばよ」

「ナルトまで…大袈裟だよ、試合なんだし、殺す気はないって」

「…明らか殺す気満々だろ、激眉先生」



真剣に見つめられ、ユウも貼り付けていた笑みをはがし、真剣にナルトを見据えた。
少し柔らかな眼差しで、こくりと頷く。



「うん…そう、だと思うよ。
きっと容赦なんてしてくれないと思う」

「…なんで…っ」



ユウが何をしたというのだ、と悲痛に顔を歪めるナルトに苦笑し、彼を抱き締めた。
驚くナルトの背を大丈夫大丈夫、と呟きながら撫でる。



「知ってるでしょう?
あたしだって、結構強いんだから」



だから大丈夫。
笑顔で言われ、ナルトは泣きそうになりながらも頷き、そっと拳を向けてきた。
その意図が分かり、苦笑してユウもその拳に左のそれを合わせ、二人は瞳を閉じる。
こうすると不思議なことに、お互いの気持ちが伝わってくる気がするのだ。



「っ頑張れよ!上で激眉先生がやられるのを高みの見物してやるってばよ!!」

「あはは、あたしも期待に添えるように頑張るよ!」



もう一度コツン、と拳をぶつけ合い、ナルトとユウは同時に背を向けた。
お互いの気持ちは、もう痛いほど伝わっていたから。
それ以上の言葉は……何もいらない。
ユウとガイ、それから審判のハヤテ以外が観覧席に着いた。




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