絆道

□第15話
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取り敢えず、いきなり走っても仕方がない、と木から降り立ち、ゆっくりと森の中を進む。
わざわざ探さなくても、恐らく向こうからやってくるだろうと判断してのことだ。



「(ヤバイな……)」



全く感覚が元に戻らない。

あれだけの殺気を放つなんて
下忍とは思えない……

一応誰かに伝えた方が良いだろうかと思案していると、カサカサと葉が音を立てた。



「お前が一人参加の琥珀ユウか……」

「いきなりぶち当たるなんてツイてるねぇ」



霧隠れの忍がユウの前に立ちふさがった。
しかも、全員勢揃いで。



「……あたし、巻物持ってませんよ?」

「知ってるよそんなこたぁよ!
とっとと潰しといた方がオレ達が合格できる可能性もあがるってなもんだ!」

「……つまり、戦う、と」



あー、まだ感覚戻ってないのに、と冷えていく思考の中、ぼやく。
しかし、もうすでにそれぞれの得物を手にユウへと襲いかかってくる。
迷ったのも一瞬、けれど腹を括ったのも一瞬だった。
キッと鋭く相手を見、クナイを手に相手と向かい合った。

一瞬のことだった。
赤い軌跡が舞ったのを視認した直後、彼らが手にしていた武器は粉々に砕け散り、何事だと目を見張った直後には気絶していたのだ。
一方のユウはクナイを手にしていたが、ほとんどその場から動いていなかった。



「えーと、巻物は……と」



巻物が発する微弱な術式の気配を感じ取り、懐を漁ってお目当ての巻物を手にする。



「んー……天の書か」



つまり後は地の書を狙うだけである。
先ほどの戦闘で少し感覚を戻すことが出来たのか、ほうっとした表情を浮かべた。

しかし、程なくして新たな刺客が現れた。



「おい、その天の書をよこしな」

「そうすれば見逃してやっからさ」

「……えーと……」



再び全員揃ってのご登場だった。
そんなに巻物を取られたいのだろうか。
数瞬どうしようか悩むが、ペコリとお辞儀する。



「ごめんなさい」

「はぁ?」



疑問の声をあげた直後には、ユウは既に行動を開始していた。
跳躍し、敵の後ろに回り込むとワイヤーを付けたクナイを2本、彼らへ投げつける。
驚きながらも敵がそれを弾けば、弾かれたことによってワイヤーも動きを変え、自分たちで自分たちを木に拘束してしまった。
しまったと気づくもすでに遅く、ふわりと漂ってきた甘い香りと共に意識を失った。



「さて、あなたたちの巻物いただきます」



ぼんやりと幻術にかかったままの男から巻物を拝借し、確認する。
地の書だった。



「……」



運がいいのか、相手の運が悪すぎるのか……。
こうしてユウの巻物は早くも1セット集まったのだった。

天地、両方の書をポーチにしまったその時、遠くの方で嫌なチャクラの気配を感じ、ハッと振り返る。



「あれは……」



あの髪の長い草忍の姿が、脳裏によぎる。
要注意人物であるその人はどうやらしっかりとした目的を持って行動していたらしい。
一切の迷いのない進行先にはナルトたちのチャクラがあった。
そして、草忍がナルトたちへ接近した直後、三人のチャクラはバラバラになってしまった。
どうやらサスケとサクラから引き離され、ナルトは一人遠くへ吹き飛ばされてしまったようだ。



「あちこちで術使っているから探知しにくいっ……!!
この感じは……風遁?」



同意書を提出する直前、彼らと握手を交わしたあの時に実は細工をしていたのだ。
嫌な予感がしていたユウが、保険に付けておいたマーキング。
風遁系の術で飛ばされたナルトはともかく、サスケとサクラのすぐ傍に草忍がいる。
二人が危険だ。

自分の予感は間違っていなかったと焦燥の表情を浮かべ、ユウは一気に駆け出した。



「!く……」



人目も憚らず木から木へと素早く移動していくと前方に網が仕掛けられており、何とか体を捻って交わす。
その先に現れた雨忍。



「ッ(邪魔しないでよ……!!)」



今こうしている間にもナルトたちに危険が迫っているというのに!!

余裕のないユウは問答無用でクナイを振るい、手早く三人を気絶させ、彼らが手にしていた地の書を2つ手に入れ、再び駆け出した。



「間に合って……!!」



あともう少し、というところで走り続けるユウが感知したのはいつの間にかサスケたちと合流していたナルトの中の九尾のチャクラだった。
ナルトがきっと持ちこたえてくれてる、それを信じてユウは突き進んだ。




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