絆道

□第5話
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ユウたちはその後、タズナから事情を聞かされた。
彼の命を狙っているのはガトーという男らしい。
世界有数の金持ちと言われる、ガトーカンパニーの現社長で、表では海運会社として活動する一方、裏では相当悪どい商売を生業としている悪どい男だ。


1年ほど前、そんなガトーに狙われた波の国の人々は、島の全ての海上交通と運搬を牛耳られてしまったのだ。

島国である波の国では海上交通は生きていく上で必要不可欠な物であり、現在はガトーに富の全てを独占されてしまっている現状。
しかし、完璧に独占している彼にも恐れるものがあった。

それが、タズナの作っている橋の完成なのである。


少しは波の国の経済状況を知っていたユウも、ここまで理不尽な話だったとはしらず、真剣にタズナの話しを聞く手前、ショックを受けていた。
話し終えたタズナは、仕方がない、と言いたげな顔で口を開いた。



「まあ……お前らがこの任務をやめればワシは確実に殺されるじゃろう……が……

なーにお前らが気にすることはない、ワシが死んでも10歳になるかわいい孫が一日中泣くだけじゃ!!
あっ!それに、ワシの娘も木ノ葉の忍者を一生恨んで寂しく生きていくだけじゃ!

いや、なにお前たちのせいじゃない!」



笑いながらなんだかんだいいつつ、脅しのように強調してくるタズナに目が半目になるカカシたち。

だったが、約一名だけは、タズナの両手を己の手で包み込み、強い意志を宿す瞳で彼を見上げた。



「タズナさんそんなこと言わないでください!
カカシ先生がもしここで任務を放棄したとしてもあたしだけでもこの任務を完遂してみせます!!
安心してください、あたしが必ず守りますから」

「おおなんと心優しいお嬢ちゃんなんじゃあ!!
しかし、いいんじゃ、お嬢ちゃんを巻き込んではいかん!!
先生さんがこの任務を放棄したら、お嬢ちゃんもちゃんと帰るんじゃぞ!
気持ちだけで充分じゃ!!」

「そんな……っカカシ先生……」



ユウはカカシの元へ駆け寄ると、控えめにキュっと彼の服の裾を掴む。
そして眉をハの字にし、縋るような瞳で見上げてくる。
幻覚だろうか、犬の耳と尻尾が見える……。
カカシは思わず目をこすったが、消えない。
取り敢えず、ポーカーフェイスを保つがしかし、顔が真っ赤なのは隠せない。



「しょ、しょうがないですね、ユウもこう言ってることですし。
国へ帰る間だけでも護衛を続けましょう!」



そう言いながら、真っ赤な顔を隠せず、サスケとナルトとサクラに痛いお灸を据えられたカカシだったとか……。
とまぁ、そんな経緯があり、今は波の国へ向かってボートに乗せてもらっているという訳だ。

前が見えないほどの霧が、ユウたちの視界を覆っている。



「すごい霧ね、前が見えない!」

「そろそろ橋が見える。その橋沿いに行くと波の国がある」



しばらくすると、前方にまだ未完成のとても大きな橋が姿を表し、思わずナルトは「でけェー!!」と叫んでしまった。



「コ…コラ!静かにしてくれ!
この霧に隠れて船出してんだ、エンジン切って手こぎでな。
ガトーに見つかったら大変なことになる」

「「「………」」」



ガトー。
その名に緊張感が増すのが分かった。



「もうすぐ国に着くぞ
タズナ……どうやらここまでは気づかれてないようだが……念のためマングローブのある街水道を隠れながら陸に上がるルートを通る」

「すまん」



橋のトンネルのようになっている所を通り、視界が開けると、目の前には海に浮かぶ森を連想させる、マングローブと呼ばれるものが姿を表し、ナルトは感嘆の声を漏らす。
桟橋に無事着き、一行は桟橋に上がる。



「オレはここまでだ
それじゃあな、気ィつけろ」

「ありがとうございました」

「ああ、超悪かったな」



そのままエンジンをかけ、ボートを走らせる姿を見送った後、一行は歩き出す。



「よーしィ!ワシを無事送り届けてくれよ」

「はいはい」



深くため息をつき、カカシは次にやってくるであろう強敵を思い、やだやだと首を振る。
そんなカカシを見たユウは、苦笑しながらカカシの隣へと駆け寄った。





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