絆道

□第3話
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「ム〜〜〜〜」

「ナルト!じっとしときなさいよ!!」



キョロキョロと落ちつきなく廊下へ顔をのぞかせるナルトにサクラが呆れたように声をかける。
しかし、サクラもイライラしているようでその声は苛立ちを隠せていない。



「何でオレ達7班の先生だけこんなに来んのが遅せーんだってばよォ!!」



注意を受けたナルトは振り返りざまに抗議し、ムスっとしながらほかの班はみんな新しい先生とどっか行っちまったし、イルカ先生も帰っちまうし!と愚痴る。

確かに遅いなと思っていると物音がし、そちらを向けばナルトが黒板消しをドアの間に挟んでいた。
悪戯目的の簡単なトラップだ。
得意げに笑っているナルトを注意するサクラもいささか楽しそうだ。



「フン、上忍がそんなベタなブービートラップに引っかかるかよ」

「まぁ、確かにサスケの言うことも一理あるよね」



何の思惑も無ければ、の話だけど……

呆れたようにいうサスケにあはは、と笑いながら密かに分析し始める。
その時、教室の戸に手がかかった。
そして、黒板消しは見事にバフッと銀髪の男の頭に白煙を散らしながら落ちた。

引っかかった・・・?

男を見据え、じっと考え込む。
しかし、ナルトはそんなユウの様子には気付かず、銀髪の男を指差し、大爆笑だ。
サクラは男に謝りつつ、喜んでいる内心がモロバレである。
一方でサスケはこれが上忍?と文句を言いたげに訝しそうに男を睨んでいる。
とまあ、四者四様の反応を観察していた男は、なるほどね、と目を細めた。
男は、顎に手を当て、笑う。



「ん―――……なんて言うのかな。
お前らの印象はぁ……
嫌いだ!!」

「……」



大人げない、容赦ない一言だった。
考え込んでいて聞いていなかったユウ以外の3人はズーン、と空気が重くなる。
しかし、忘れていたかのようにユウの方を凝視した男はニンマリと笑い、歩み寄る。
ふと、自分に影がかかり、我に帰ったのだろう。
きょとんとした顔で見上げてくる少女に、うんうんと頷いた。



「君以外はね」

「!!?」

「?」



コテン、と首をかしげるユウと、雷を受けたかのようにショックで固まるその他3人。
男はその他3人に構うことなくユウに抱きついた。
ユウの体がビクゥッ!と震え、固まってしまう。
心なしか、表情まで凍りついたように引きつっているようだが、男はお構いなしのようで頬ずりしてくる。



「いや〜、ほんっと可愛いね〜♪
どう?センセーと二人でチーム組まない??」

「ぁ……ぅあ……!?」



抵抗しようとするも、体が震えて上手く力が出ないようで、ビクビクしている腕の中の少女を見て目を細める。

……なるほど、ね。

少しの怒りと、悲しみで一瞬顔を歪める、が、そんな男のことは当然ナルトたちが知る由もなく、少女を奪還するべく攻撃を仕掛ける。



「コォラァァこのエロ教師ィイイイ!!」

「ユウから離れなさいよ!!息の根止めるわよ!!?」

「……殺す!!!」

「ちょっタンマタンマっ痛い痛い痛い痛いッ!!!
ゴメン!!先生が悪かった!!悪かったから!!
得にそこの黒髪!!さり気なくクナイやら手裏剣やら投げようとするな!!
洒落にならないからァアア!!」



殴りかかってくるナルトたちから防御の体制をとるため、少女を開放する。
少女は強ばる表情で震える体を抱きしめた。

……あ、あたし、まだ……

目をぎゅっと閉じ、ものの数秒で体と気持ちを落ち着かせ、すっと開いた瞳には先ほどの恐怖は微塵も出していない。
それをボコボコにされるのを防ぎながらチラリと見た男は、内心舌を巻く。

……ものの数秒であんなに落ち着かせるとはね……

それは正直、喜ばしいことでは、ないけれど――――
それだけ、何度も恐怖を、自分にとってのトラウマを、その身に味わって来た、ということなのだから―――――







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