想いの音

□Act.01
1ページ/5ページ




「…あ、1組だ…」



少し周りから離れた所で、目を凝らしてなんとか自分の名前を見つける。
他に見知った名前はないかと探すも、トビ以外中学校で一緒だった者の名前はなく、内心肩を落とした。



「…仕方ないよね…」



クラス表に背を向け、教室へ向かった。

1年1組なら正面玄関から結構近い所に位置しているので、そう言う意味では良かったのかもしれない。
教室はまだポツリポツリとしか人はいなく、少し安心しながらも出席番号の札が置かれた机に鞄を置き、座る。



「あー!ユウちゃんだ!!これから3年間よろしくお願いしまーす!!」

「こちらこそよろしくお願いします、トビくん」

「くぅ〜朝からユウちゃんの天使スマイル頂いちゃったッス!!
同じクラスとかマジグッジョブ!!」

「??」



トビくんの使う言葉は時々分からない。
現代語とは難しい、と思いながら朝からハイテンションなトビくんを見て笑った。
その時、ガラガラと勢い良く開け放たれたドア。
そこから3人の女の子と男の子が肩で息をしながら入ってくる。



「ぃよっしゃー!ピンツがビリー!!
ってことで、今日のアイス代よろしくな!!」

「えぇ〜!?も、もしかしてロクサスたちの分も?!」

「もちろん!まぁ、今日ロクサスたちと遊べたらの話だけどね」



そんな〜、と項垂れるぽっちゃり体型の男の子にチョウジの姿が重なった。
あのツンツン髪の子はキバと雰囲気が似ているかもしれないな、と考えて内心苦笑する。



「?ハイネたち、こんなところで何やってるんだ?」

「みんな朝から元気だね」



そこでワイワイ話出す彼らは、どうやら中学時代からの友達らしい。
きっと、他のクラスにいるみんなも、今頃あんな風にお話してるんだろうな…
自然と気分が下がって来て、俯いているとふわりと頭に手がおかれ、ビックリして固まる。



「ユウちゃん元気だしてくださいよ〜!オレがいるでしょ?」

「…そう、だね…」

「分かればいいっす!」



トビくんは今まであんまり関わったことがなかったけど、いい人みたい。
なんとかやっていけそうだとホッとした。

他愛ない雑談をしていると、鐘がなり、先生が教室に入ってきた。



「…あ」



オビト先生だ
知り合いの姿に少し私の気持ちが浮上したけど、トビくんはげっとなんだか嫌そうだ。



「1年1組の担任になったうちは オビトだ。
これからよろしく頼む」



ふっと静かに微笑んだオビト先生。
女の子たちがざわざわしていて、高校でも人気なんだなと苦笑した。




それから、始業式やら何やらが終わり、今日はHRのみで解散となった。
鐘と同時に週番になった人が起立、と号令をかける。



「礼」

「「「「お疲れ様でしたー」」」」

「おつかれ」



さて、と帰り支度をしていると、ピシャン、と大きな音を立ててドアがあいた。
なんだろう…?と音源を見れば、見慣れたライトブラウンの髪が視界に入り、目を丸くする。



「デミックス先輩、どうしたんですか?」



取り敢えず鞄を放置して、先輩に駆け寄る。
ゼェゼェと荒い息をしているから、きっと走ってきたのだろう。
ずい、とギターケースを押し付けられ、反射的に受け取ると、ガバッと顔をあげた。



「どうしたんですか、じゃないって!とにかく早く部室行こ!」

「??ぶ、部室??」

「そーだよ!ユウが高等部になったら、ウチのバンドに正式に入る約束だったろ?」

「あ」



そうでした。
何故か分からないけど、中等部の頃、放課後の教室でお気に入りの歌を口ずさんでいた所を目撃され、スカウトされたのをきっかけに、私はデミックス先輩が所属しているバンドに仮メンバーとして入れさせてもらったんだよね
当時はど素人だったギターや他の楽器をあらかた教えてもらい、高等部に入ると同時に正式に入ることも決まっていた。



「で、でも始業式の今日からもう始めるんですか?」

「あったりまえ!!…っていっても、今日は忙しい奴もいるみたいだから、正式なメンバーとして迎えるための顔合わせって奴。
あと、ちょっとした書類も書いてもらうから!」

「あ、すみません…初日からやると思ってなくって先生から書類貰ってないです……」

「大丈夫!そんなん俺に任せろって!」



そう言ってデミックス先輩はオビト先生の元へ行き、何やら交渉するとあっという間に手続き用のプリントを貰い、戻ってきた。



「へへーん、特別に許可貰っちゃったぜ!」

「あ、ありがとうございます
……オビト先生、突然ですみません」

「…ユウ、頼むからデミックスのようにはなってくれるな…」



はぁ、とため息をつくオビト先生。
ちょっと申し訳なくなってきたけど、正式なメンバーになれるのは嬉しい。
荷物を詰め終えた鞄を手に、先輩の元へ行く。



「じゃ、行こうぜ!」



頷くと、意気揚々と教室を飛び出した先輩を追い、私も教室を後にした。




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ