紅狼

□第三訓
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「…………何この状況」


今日も今日とて快晴の空が広がるいい天気の日。屯所内の会議室の襖を開ければ、隊士達に囲まれている土方さんが居た。


「何これ、何かのプレイ?」

「ちげぇよっ!!」

「副長補佐!」


隊士達が今度は私を囲むようにドッと押し寄せてくる。

「え、ちょ、えェ!?何々、何事!?」

「局長が女をかけた決闘に汚い手使われて負けたって本当っすか!?」

「…………え?近藤さんが!?」

「女にフラれるのはいつものことだが、喧嘩で負けたって信じられねーよ!」

「銀髪の侍ってのは何者なんだよ!!!」


銀髪の侍…。

『おーい名前、そこの餡子取ってくれ』

脳裏に浮かぶのは、いつもアホ面を浮かべていた腐れ縁の姿。…いやいや、そんな事あるはずがない。だってそうだもん。ほら、銀髪のやつなんてこの世にいっぱい居るからね。BLEAC〇の日番〇隊長しかり、呪術〇戦の目隠し野郎しかり。

「なんでも天パだったらしいぜ!」
「まじかよ!銀髪の天パってキャラ立ちしすぎじゃねぇか!」
「おいメタ発言やめろ!」


アイツしかいねェェェェ!!!!
近藤さんやる銀髪で天パの侍なんて、アイツしかいねェェ!!!!!!
何やってんのアイツ!!
どんな前世の罪背負ったらここまで腐れ縁引きずれるわけ!?


「副長補佐が震えてる!?」
「それに冷や汗もやばい!?」
「こんな副長補佐見たことねェ!」


普段、騒ぎふざけるが平静さがある名前の滝汗を掻き、真っ青な顔をする様子に隊士達のざわつきは増々大きくなった。


居づらい、ここに居づらすぎるゥゥゥ!!


「つか誰だ、くだらねェ噂を垂れ流してるのは」


土方さんの問いに、全員がある方向をビシィッと指差す。


「「「「沖田隊長が!!」」」」
「スピーカーでふれ回ってたぜ!」

「俺は土方さんに聞きやした」


ドヤァと効果音の付きそうなほどに憎たらしい笑顔を浮かべる総悟が鎮座していた。
流石はドSだ。見ろあのドS気を含んだ笑みを。ムカつく。思わず殴り倒したくなるぜ。


「アイツにしゃべった俺が馬鹿だった………」

「土方さん、総悟と隣のおばちゃんには気をつけないとってあれほど…」

「あんたが火種じゃねぇか!!」
「え!てことはなに?まじなのあの噂!」


ますますヒートアップして騒がしくなる会議室内に、土方さんの青筋が浮き上がってくる。
まずい。
反射的に両耳を手で塞ぐ。


「うるせェェェェ!!!!!!!!!!!!」


机を蹴り上げる土方


「うわぁ!」


我慢の限界だったのか、瞳孔が開ききった瞳を浮かべながら、鞘から刀を抜く土方さん。



「会議中に私語をした奴は切腹だァ、俺が介錯してやる、山崎………まずはおめェからだ名前手伝え」

「ちょ、土方さん落ち着いて!」

「俺何もしてないっ!」



山崎さんを刺そうとする土方さんを、必死に抑えていた時だった。


会議室の襖が開かれる。


「おー!今日はいつになく白熱した会議だなァ!おい!よぉーし!じゃあ皆!今日も元気よく市中周りに行こうか!!」


タイミングが良いのか悪いのか、
左頬が腫れている近藤さんが立っていた。




「「「「…………………」」」」





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