紅狼

□第二訓
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白米の上に勢いよく注がれる黄色い物体。



独特の匂い、異様な光景…というより、いつもの光景に近くで食べていた隊士達は自分のお盆を持ち、そそくさと移動をする。

この野郎、私を置いてきぼりにするつもりか。

隊士達の『また始まった……』という視線を感じていないのか、どんどんと黄色い物体を白米が見えなくなるまで注ぐ目の前に座る男は他でもない、我が直属の上司である土方十四郎だ。白米の見る影もない茶碗に吐き気を覚えながら、ズッと緑茶を啜り、そっとため息を吐く。



「土方さん…あの、朝から土方スペシャルはやめませんか」

「あァ?テメェマヨ力≠ネめんなよ、朝から食わねーと調子がでねェんだよ」

「マヨ力ってなんですか、バカ力の間違いじゃないですか」

「うるせェ」


気持ち悪そうにする私をお構いなしに、土方さんは、黄色い物体をどんどん口へと運んでいく。やばい、本当に気分悪くなってきた。



「テメェ土方コノヤロー、朝からその忌々しい黄色い物体の匂いをかがないといけない俺等の身にもなれ」


いつの間にか隣に居た総悟が壮大な舌打ちをかましながらいう。


「「「「そーだそーだ!」」」」


食堂内にいた隊士からの賛同の声に、土方さんのこめかみに青筋が浮き出る。


「忌々しいってなんだ!忌々しいって!マヨを否定する奴は切腹だァ!ゴラァ!」


「「「「ギャァァァ!!」」」」


刀を抜き、逃げ回る隊士達を鬼の形相で追いかけ回す土方さん。
そして、その土方さんをバズーカで狙う総悟が……………


「………ちょ、何してんのォォ!!!!!!」

「土方、死になァ」




ドガァァァアァァンッ!!!



「撃ったよ!!躊躇わずに撃ったよこの子!!何やってんの総悟ォォォオ!!土方さん!!みんなァァ!!!!」

「大丈夫でさァ、俺が土方の代わりに名前を護ってやりやす」

「何が大丈夫?!全然大丈夫じゃないんだけど?!」


半壊になった食堂、食器は地面に割れ落ち、食べ物もテーブルやら畳やらに飛び散っている。


「土方さぁぁん!」

「呼んだかァ?名前」

「っ!」


声のした後ろを振り向く。


「ひじか…………………」


そこに立っていたのは、
血だらけの………………………否、






マヨだらけの副長が居た。


「ッチ、生きてやがった」


忌々しそうに言葉を吐き捨てる総悟。


「ッチじゃねェよ!!
総悟、テメェ毎回毎回・・・今日こそとっちめてやらァ!!」

「っと、いけねェや、駄菓子屋の当たりクジ交換すんの忘れてた」

「待てゴラァァ!!」


颯爽と逃げた総悟を土方さんは追いかけていく。



「……………」



散らかった食堂内に、目を回して倒れている隊士達。



「……………片づけよ」



シャツの袖をまくり、割れている皿の破片を集め始める。




今日もこうして、慌ただしく、騒がしい朝で私達の日常が始まります。




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