紅狼

□第一訓
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今日も今日とて暇な市中見廻り。

土方さんから頼まれていた事務仕事は終わったし、今日は見廻り当番だから…あぁ、とてつもなくだるい。
欠伸をしながら、身体のこりをほぐすように伸ばしぼんやりと歩いていたときに、それは起こった。




ガッシャァァァァン!!!!!



突如、前方から聞こえてきた破壊音に顔を上げれば、スナック『お登勢』にバイクが突っ込んでいるのが見えた。


「……まじか」


冷や汗が額から滲み出るのがわかる。

これは面倒なことになるぞ。
上に住んでる銀時達もその音を聞きつけてか上から降りてきていた。
…面倒くさい、出来ることなら関わりたくないが…。私は真選組。
とりあえず、行かなければ。


「真選組です、通してください」


警察手帳を見せながら、人混みをかき分けてバイクの運転手に駆け寄る。


「大丈夫ですか?」

「うっ…………」


土埃が凄いけど目立った外傷はなし。
うん、意識もある。焦点もあっている。
身元を聞こうと口を開きかけた時、勢いよく飛び出してきた何かに遮られる。


「くらぁぁぁぁ!!!!!!ワレェェェェエ!!!!!!人の店に何してくれとんじゃァァ!!!!!!死ぬ覚悟はできてんだろーな!!!!!!」

「す、すみません……昨日からあんまり寝てなかったもので……」

「よっしゃ!!!!!!今 永遠に眠らしたらァァァ!!!!!!」


いますぐ息の根とめられそうだ。


「お登勢さん、怪我人相手にそんな!!」

「そうだよお登勢のばあさん、後でたっぷりと金巻き上げよーよ」

「警察らしからぬこと言ったよこの人!!!!!!」

「まー、とりあえずあれだ、神楽救急車よべ」

「任せてヨ!スゥー救急車ァァァ!!」

「誰がそんな原始的な呼び方しろって言ったよ!!!」


銀時が神楽の頭をはたく。
一体なんのギャグだ。
辺りに散らかっているのは手紙やら封筒やら。コイツ、飛脚か。


「んじゃまぁ、屯所にきてもら………え、なに」


茶色い小包を私たちに向けて差し出してくる飛脚の男。


「こ、これ…これを俺の代わりに届けてくださッなんか大事な者らしくて………ッ届けそこなったら俺、クビになっちゃうかも………お願いします」


自然と茶色い小包を持つ銀時。
渡した途端に男はバタッと倒れ気絶した。


「「「「……………」」」」



顔を見合わせる銀時、新八、神楽、名前。



「……あ、やべ!カレーの火、消すの忘れてた!!」


厄介事になると分かっていて、こっちから首を突っ込むわけにはいかん!
只でさえコイツ等と…特に銀時と関わっていい思い出だった試しがない。

足早くその場を離れようとした時だった。

両肩に誰かの手が力強く乗る。


「おやおや名前ちゃん?
どこ行くのかなー?警察なんだからこれは見て見ぬふり出来ないよねー?」

「火なら大丈夫ヨ!きっと誰かが消してるから、きっと!」

「きっと、ってなんだ!そのきっとが火事の元になるんだよ!!!!知らねーのお前!!!!」


振り回しても、剥がそうとしてもスッポンの様に全然離れない銀時と神楽の手。


「…だぁー!分かったよ!!!!!!行けばいんでしょ行けばっ」


パッと手を離され、ニタニタと笑う銀時と神楽が顔を覗きこんでくる。


「さっすが名前姉!」

「そうそう、行けばいいんだよ行けば!名前ちゃんよく出来ましたー!」


名前のこめかみに青筋がたつ。


「もっぺん言ってみろ、この天パ死んだ魚目野郎」

「あれ?小さい頃はあんなに可愛かったのに……はは、成長ってこわいなー!お父さん泣いちゃう」

「誰がお父さんだっ!!」



両腕をガッチリと神楽と銀時に掴まれ、強制的に連れていかれる名前。
新八は、茶色い小包の住所へと、先導をきって歩いていく。








《おい名前!返事しろ!》



地面に転がった無線機が、必死に名前の名を呼んでいた事に
本人も周りも気づいていなかった…………。
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