短編
□マルコ娘
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母は、強く美しい人だった。
みんなに愛される人だった。
裏表がない人だった。
純粋に人を見る人だった。
私の自慢の母だった。いつだって私を愛してくれた人で、守ってくれた人で、大好きな人。
私の気持ちにすぐ気付いてくれて、私が化け物になった時だって私のそばにいてくれた。
『レン、貴方のパパはね、とってもカッコいい人よ』
父さんの事を話す母さんは、とっても綺麗で、きらきらしてて、楽しそうで、幸せそうで、私も母さんの写真でしか見たことがない父さんの事が大好きになった。
『ママ…私のこと、パパ、きらいじゃないかな…』
『何言ってるの!私の旦那で貴方のパパよ?きっと貴方のこと愛してるわ!ね?』
私のせいで体を弱くした母さん。そんな私を、父さんは嫌いなんじゃないかって不安に思う度に、母さんはそう言って私の頭を撫でて、抱きしめてくれた。
セイエンさんは、母さんと一緒に船――モビーを降りた人。母さんと父さんの話、コックのサッチさんの話、母さんとセイエンさんが大好きな""オヤジ""の話。
私はセイエンさんと母さんがしてくれるモビーの、家族の話が大好きで、母さんとセイエンさんもそれに喜んでたくさん話を聞いた。
私が"悪魔の実"を食べてしまった時も、そのせいで島の皆に嫌われてしまった時だって、母さんとセイエンさんは味方でいてくれた。
『レン、私が死ぬことも、貴方が悪魔の実を食べたのも、貴方が悪いんじゃないのよ…。ねぇ、母さんの言うこと、信じてくれるでしょう?
貴方の父さんも、貴方の事を愛してくれるわ。もう年経ったら、貴方の父さんは迎えに来てくれるから…それまで、この島にいるのよ。セイエンも、いてくれるから』
『幸せになりなさい、レン。強く、美しく、元気で、明るく、…幸せに、過ごしてね…。ごめんね、レン…』
母さんの遺言。今まで、忘れたことは無い、母さんの言葉。最期の最後まで私を愛してくれた、母さん。
母さんのおかげで島の皆からの悪口も陰口も耐えられた。セイエンさんは、暴力から守ってくれた。
それでもたまに殴られてしまうけど、セイエンさんは丁寧に手当してくれて、ちょっとわかりにくい心配をして、私の為に憤ってくれるから、私は我慢出来た。
父さんが迎えに来てくれる、という希望、母さんの言葉、そしてセイエンさんのおかげで、私は今まで生きてこれたのだ。
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