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□狂想曲 15
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「お巡りさん!こっちです!」
綾美を引っ張った人物が大きな声でそう言った
あれ?この声聞き覚えが....
そう思って顔を見るとやはりあの男だった
どうしてここに?
そう言おうとした口を彼の大きな手で塞がれてしまう
とりあえず黙れということらしい
顔を見ようと捩った体を元に戻すと、大人しく口を塞がれたまま頭だけは追跡者へと────
「もうサツが来やがったか....クソ野郎が...!!」
(だから昼間はだりィんだよッ...)
対するアレスは先ほどの警察を呼ぶ声を聞いて、声とは逆方向に走り去った
例の死体を置いたまま
────────────
『どうしてあなたがここに?』
開放されるなり開口一番で出てきたのはやはりそれだった
驚いた表情、不審がる曇った表情
───貴方とはもう縁を切ったはず
そう言いたげな彼女
「君をずっと探していた」
目の前の褐色の男はそう答えた
『安室さんが私を?』
「そうだ....絶対君は無茶をやらかすと思ってね、あれからずっと君を」
『絶対って何よ』
「違ったかい?」
『違わない』
彼から視線を逸らし、未だ引き寄せられている状態の自分に気付く
『あの───』
「腕」
いつまでそうしているのかと問おうとしたところ、彼の単語に綺麗に上書きされてしまう
思はず"?"とすっとんきょんな声を上げてしまった
彼の視線は血の滲む右腕へと向けられていた
『掠ったの』
と笑いながら言う
「ったく君は─────」
続きは言われなくとも分かる
そう、運が悪ければ銃弾を背中に受けていた
もっと悪ければ死んでいた
安室の瞳がそう訴えている
ここが薄暗いせいか、彼の瞳の青が色味を亡くしている
怒りさえ孕んだそれを見つめ返し、綾美は真顔に戻った
『どうして安室さんがそんな顔するの』
───オリンポスを潰すのか
そう問いかけてきたあの時と
"心配された"と感じたいつぞやのホテルと同じ表情
「さっきの男は例の組織の一員だろう」
それには答えない代わりに別の質問が降ってきた
首を縦に動かす
「奴の名前は」
『さあ、そこまでは』
「本当だな」
『ええ、本当』
────こいつ、知っている癖に