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□狂想曲 6
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タオルで雫を丁寧に拭き取りながら、冷蔵庫のミネラルウォーターを取り出す
腰まで伸ばした黒髪
手入れは怠れない
バスローブ姿で悠々とデスクに向かう
そこには1台のノートパソコン
綾美がこれまでに入手した貴重な情報たちが眠っている
中には命懸けで手に入れたものだってある
これから何をするかだって?
────勿論ハッキングよ
FBIやCIA、ICPOなどの機密情報は既に入手している
セキュリティを破るのは簡単だった
破るというよりは、出し抜くと言った方がいいだろう
あるプログラムのおかげで、綾美はハッキングを容易に行うことが出来ている
それは
綾美の父親が開発したハッキング専用の極秘プログラムだ
彼女の父親は、とある組織の技術開発事務局員だった
国際テロ組織オリンポス
それが組織の名だ
母親の博子もその組織の一員だった
彼女は変装に長けており、その美貌と情報収集能力から諜報活動を主として任されていた
父は、組織から請負う任務とは別に、独自にプログラム開発も行っていた
そして完成したのが、このハッキング専用プログラム
試運転で対象としたのは
────オリンポスの中枢コンピュータだった
そこで彼が見たものは
オリンポスがこれまでに行ってきたテロリズムや裏ルートで入手した国家機密
更には
自分たちには知らされていない
オリンポスの最終目的──────
恐ろしくなった彼は脱走を目論んだ
しかし、内部からの摘発によって阻まれ、プログラムの存在が上層部にバレてしまう危険性が生まれた
裏切り行為を見せた代償として差し出すものは自分の命と決まっている
彼は死に際にこのプログラムのコピーを娘に託し、本体は粉々に──