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□狂想曲 12
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『ここは....』










部屋全体はクリーム色のような暖かい色味の壁紙で覆われている

お洒落な照明の光が眩しい



体を起こそうとした時、頭が少しクラりとした






「もう起きたんですか?早いですね」






ケトルとカップを持って現れた安室が驚いて声を上げる

そして慣れた手つきでコーヒーを入れ始めた
インスタントだが




「ここは僕の家じゃありません、ホテルです」


『────』




だろうと思った

窓があるにはあるが外が見えないようにしてあること

灰皿とテレビのリモコン、メニュー表

どれもホテルと同じ



この男はどういう気持ちでこんな所を選んだんだろうか





「飲みますか?まだ熱いですけど....大丈夫です、何も入ってませんよ」

ふるふると首を振る綾美


「怒ってるなら謝ります、けれど、こうでもしなければ貴女は僕ときちんと話してくれないでしょう?」


『こんな事されても話そうなんて思いませんよ』


「まあそんな事言わずに....」



飲むように促されて仕方なくコーヒーに口をつける

美味しくない
コーヒーは大好きだから分かる
インスタントで美味しいコーヒーなんか無い






『私がいけなかった』

「え?」


綾美がコーヒーをのぞき込みながら言った



『遊園地で安室さんにあんな事言ったから』


あんな事




"お仲間に聞いてみれば?"

"A secret makes a woman woman"





きっとこの事だろう




「そうですね、貴女があんな事を言わなければ、眠らせて連れ去ってまで話したいなんて思いませんでした」


彼はそう言ってソファーに腰掛けた

ベッドにいる彼女と微妙な距離
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