始めての恋の味
□いち
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全ての始まりは、きっとここからだろう
"彼等との"出会いもーーーー
ここからだろう
一番隊隊舎前ーーーーーーー
春を感じさせる暖かい風が吹き抜ける隊舎前
桜の花が空を舞いながら、ほのかに香りを運んでいる
そんな中、隊舎の大扉の前に立つ少女が一人いた
腰まで伸びた艶のある黒髪が風に乱されながら、じっと【一】と書かれた門を見つめている
長いまつ毛に縁取られた大きな瞳、高く筋の通った鼻に薄く形の紅い唇
右目には黒の眼帯を巻いていて、その整った顔立ちは誰が見ても振り返る程だ
『本日を持ってここ護廷十三隊に入隊する、##NANE1##伊織です
山本総隊長に呼ばれて参った故、門を開けられたし』
凛とした声が門に向かって発せられた
すると、大門がギイイと音を立ててゆっくりと開き始める
少女は腰に指さっている二本の斬魄刀をカシャカシャと揺らしながら、中へと入って行った
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『一条一条参りました』
一番隊隊舎内にある総隊長の執務室へ着くと、伊織は扉の中にいるであろう総隊長へ呼びかけた
すると中から入るが良い、と声がかかる
その扉を開けば、中には総隊長が居た
『ーーーーー来たか、伊織よ』
中に入ってくる伊織を見ると、総隊長…山本元柳斎は懐かしむように言った
『お久しぶりです、総隊長殿』
『相変わらずじゃのう…まさかこんなにも早く入隊してくるとは思っとらんかったぞ』
総隊長の前へとやってくると、伊織は立ち膝をつく
『…お褒めに預かり光栄です』
総隊長は普段の威厳ある表情とは違い、どこか柔らかい顔付きだ
『まあ肩の力を抜け。二人ならばそんな堅苦しい事をする必要もないじゃろう』
『…そうですね』
そう言われると、##NANE2##は立ち上がった
『話は聞いておるじゃろうが、お主は入隊と同時に席官入りしてもらうぞ、伊織』
『存じております』
『それでな、お主自身どこの隊に入りたいと言う希望がなかったのでな…こちらで入隊する所は決めさせて貰ったぞ』
『はぁ…で、私はどの隊に?』
『もうそろそろ来るじゃろう…挨拶するのだぞ伊織。その隊長は、お主と同じ天童と呼ばれた天才児じゃ』
『…』
総隊長がそう言うと、伊織は今までまったく動かさなかった表情を少し変えた
伊織は少しの間俯くと、元柳斎に問うた
『天才児…という事はまだ若いのですね』
『歳は…お主と同じかそれくらいかのぉ…史上最年少で隊長になった天童よ』
『…そうですか』
静かに##NANE2##が頷くと、ふいに扉が叩く音が部屋に響いた