とある惑星の使者

□お兄ちゃん
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玄関から戻ったクリスが自室に戻ると、ミンソクは部屋からいなくなっていた。
それを確認すると、クリスはミンソクの部屋に向かった。

「ミンソク」
「ん?」

ベッドに腹ばいになって携帯をいじっていたミンソクは、顔だけをクリスに向けた。
クリスはミンソクを見ずに、ベッドに腰掛けてドアの方を眺めた。
なかなか話しだそうとしないクリスを、ミンソクは待った。
ほどなくして、クリスはそわそわと体を動かしながら口を開いた。

「さっきの、ミンソクの態度」
「何の態度?」
「俺を弟扱いするような態度」
「自覚ないんだけど」

クリスの話に、ミンソクは首をかしげる。
信じられないという顔で、クリスがミンソクを見下ろす。
ミンソクもまた、困惑顔で見返す。
その表情を見て、クリスはドアの方に向き直った。

「言ってただろ。早めに布団に入って寝なくちゃねって、子供に言うみたいに」
「ああ、それか」

短く笑ったミンソクは、起き上がってクリスの隣に座った。

「怒ったの?」

覗きこむように見ると、クリスは顎を引いてミンソクを見降ろした。
それから、クリスはフッと笑って「いや」と言った。

「不思議な感覚だった。ミンソクは同い年だし、けど、さっきの、なんか、お兄ちゃんみたいだったから」
「そっか」
「うん」

クリスはミンソクから目線をはずし、ドアを見る。
ミンソクも同じ方向を眺めて、表情を和ませた。

「お兄ちゃんぽくしようなんて、思ってないんだけど、勝手に口から出たみたい」

隣同士で座る二人の間は半人分開いており、しっかりパーソナルスペースを守った距離があった。
会話のテンポはゆっくりで、相手の話を咀嚼してから返事を返すような間がある。
シウミンの話に、クリスはたっぷり10秒使ってから話し始めた。

「二人きりで、あんな雰囲気だったからか、恥ずかしかったけど、何か嬉しい気がした」

クリスのはにかむような笑顔に、ミンソクは驚いてしまう。

「こんなに素直で可愛いクリスは初めて」

思わずそう言うと、クリスは長い腕をミンソクの首に巻きつけた。
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