特設会場

□月明かりふんわり
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体を求め合った後、露天風呂に入り、すっかり夜になった庭園を二人で歩いた。

「隣にお前がいると、気が散る」

ジホは抗議するように繋いだ手を引っ張る。

「何、一人になりたいって事?」

ユグォンは笑って「よく分かってんじゃん」と言った。
繋いでいた手を離したジホは、少しだけ早歩きになって、桜の木の下まで行ってしまう。


ジホはそれほど遠くに行く気はないし、ユグォンはジホを追いかけたりしない。


お互いに、お互いの行動は良く分かっていた。


ジホが遠くに行かないから追いかけないのか、ユグォンが追いかけないから遠くに行かないのか。
どちらが先かわからないが、とにかく、結果そうなった。


ジホは桜の木を見上げ、ユグォンが隣に並ぶのを待つ。
ようやく追いついたユグォンを横目で確認しながら、ジホは口を開いた。

「こういうのって、何かいいと思わない?」
「夜桜?もうほとんど葉っぱだけど」
「んー、なんか、インスピレーションが湧きそう」
「次回作は桜がテーマ?」
「どうかな」

ユグォンがジホの手を握ったのを合図に、二人はまた歩き出す。

「ジホ」
「うん?」
「寒くないか?」
「そろそろ戻ろうか」



手をつないだまま旅館の部屋に戻ると、布団が2組敷いてあった。
寝支度を整えると、当然のように片方の布団に一緒に入り、くっついて横になる。
仰向けのユグォンの腕にまとわりつくようにジホが絡まる。

「俺もさぁ」

ユグォンが口を開くと、ジホはその頬にキスをして「ん?」と微笑む。

「俺も、いいなって思った」
「何が?」
「ん?うん」
「え?」

ジホはうつ伏せになり、肘で体を支えてユグォンの頬を眺めた。

「ユグ、何がいいなって思った?」
「うん」
「うん?」
「うーん、なんか、雰囲気が?」
「あ、桜の?」
「うん」
「そ、」
「結局、ジホと一緒にいると、楽しいのかもしんない」

天井を見ていたユグォンは、恥ずかしいのかジホに背中を向けて横向きになった。
ジホをそれを追いかけて後ろから抱きしめる。

「ユグナ、君ってやつは、いつでも感情を自覚するのが遅いよ」
「・・・・・・」
「でも、それが愛おしいんだよ」
「あ、そ、」
「ユグナ」

名前を呼ばれたユグォンは、くるりと向きを変えて正面からジホにくっついて囁く。

「ジホ、好きだよ」
「タイミングばっちり」
「おやすみ」
「タイミング最悪。ねぇ、本気で寝ちゃうの?」

言いながら、ジホはユグォンの脇腹を撫でる。
その手を制止して、ユグォンは「さっきしたじゃん」と布団にもぐる。

「約束は?」
「なんの?」
「縁側でするってやつ」
「しないってば」

ジホは、潜り込んだユグォンの頭を探り出し、自分の方に引き寄せる。
嫌がるユグォンを無視して、強引にキスの雨を降らせた。
ユグォンは緩く反抗して、ジホの胸に手を当てた。

「やめろって」
「ユグ、」
「なに」
「ユグ、好きだよ」
「分かったから」
「したいよ、ユグ、好きって気持ちのまま、ユグを愛したい」
「アーティストってみんなこうなの?体力魔人?」
「知らない。俺はユグにだけ、こうだよ」
「恥ずかしい奴…」


***


縁側に腰掛けた2人は、夜風を感じながら、肩をくっつけて月を見上げた。



END
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