とある惑星の使者

□やっぱり女がいいんじゃないの
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番組収録中、タレントがいつものようにジョンインのダンスについて褒めるのを聞いていた。

「本当にカッコいいですよね」
「いやぁ」
「モテて仕方がないでしょう?」
「いやぁ」

照れて面白い事の一つも言えないでいるジョンインに、ベッキョンがちゃちゃを入れる。

「モテすぎて、ラブレターなんて毎日ですし、彼目当ての出待ちも本当にすごいんですよ!」

それにもまた、照れたように笑うだけだった。
俺と言えば、いちいち話す人の方に顔を向けて笑ったり頷いたり、ちゃんと話を聞いているポーズをしながら考え事をしていた。

まず、俺とジョンインはいわゆる恋人同士である事をここで明らかにしておく。
しかし、当然公言できる訳はなく、秘密の関係だ。
メンバーはうすうす気付いていると思うが、下手にいじってくる事はないし、一応お互いに知らないふりを貫いている。
仕事中もプライベートでも何でも、堂々と一緒にいることができず、もどかしい事は沢山ある。
たまにジョンインが爆発しそうになるのを、俺がなんとかいさめるのが常だ。
正直、これで本当に恋人同士と言えるのか分からないし、ジョンインに申し訳ないとも思う。
例えば、今みたいな時に。

「芸能界にいると、素敵な女優さんなども沢山いらっしゃるかと思いますが、くらっと来ませんか?」
「はぁ、まぁ」

そりゃ思うよな、と苦笑する。
恥ずかしそうにしながら応対するジョンインに腹が立ったりはしない。
俺らが未だに付き合い続けられている事自体、奇跡に近いのだから。
いや本当に、なんでこいつ、俺と付き合い続けられるんだろう。
可愛い女の子なんて沢山いるし、いい匂いだし、柔らかいし、言い寄ってくる子も多いだろうし。
というか、実際、多いのに。
ほんと、なんで俺に欲情できちゃうんだろう。

不思議だなぁと考えていたら、いつの間にか、俺はじっとジョンインを見つめていたようだ。
情けない顔をして上目遣いにこちらを見るジョンインと目が合ったので、しっかりしろという気持ちを込めて軽く睨んだ。
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