とある惑星の使者

□不可抗力
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空港、眠気まなこでフラフラ歩く。
隣にいた大きな体のセキュリティーの人。
ぼうっとしていたら、手が近づいた。
まつ毛かなんかがついていたらしい。
乱暴に取りはらうと、また前を向いた。

セキュリティーの人は気付いたから取ってくれただけ。
そして俺は、取ってもらっただけ。
なんてことない一幕。

「何してたんですか」

後ろからジョンインが声をかけてきた。
何故か少し不機嫌そうだったが、寝起きだからだろう。
大した感情も込めず、「何が?」と返した。

「セキュリティの人と」
「何の話?」
「触られてた」
「あ、まつ毛…取ってくれたやつ?」
「目瞑ったりしちゃって」
「反射だよ。それに、別にだからどうって事もないじゃん」
「ある」
「何でさ」
「俺がある」
「だから、何で」
「嫉妬」
「は」
「嫉妬します」

マスクの中でぽかんと口を開けた。
にやけそうになるのを抑えるため、目をそらした。

「……するなよ。いちいち」
「しますよ。いちいち」
「なんで」
「理由、知りたいですか?」

聞きたいが、聞いたら多分恥ずかしくてニヤニヤしてしまうだろう。

「いや、いい……」
「好きだからですよ」
「いいって言っただろ、言わなくて」

表情の変化に気付かれたくなくて、わざと眉間にしわを寄せて睨んだ。
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