とある惑星の使者

□彼女のいる男は一味違う
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ミンソクは宿舎のソファで腕組みをしながら考え事をしていた。

「どうすれば彼氏力って身に着くんだろうか?」

彼氏力とは、さりげない気遣いのできる男の事を指す。
俺なりに考えると、ベッキョンがそれに近いような気がした。

「アイツ彼女いるし、意外と優しいやつなんだよな・・・」

ある夜の事を思い出す。


その日、ミンソクは一人のスケジュールが深夜まであった。
疲れて宿舎に帰ると、ベッキョンがリビングのソファで本を読んでいた。

「おかえりなさい」
「ただいま。まだ起きてたのか」
「はい。続きが気になって」
「ふうん」

そんなやりとりをしてから、ミンソクは風呂に入り、寝支度をすっかり整えてから、台所で水を飲んでいた。
すると、ずっとソファにいたらしいベッキョンは立ち上がって、体を伸ばしながら尋ねた。

「ん〜、ヒョン、もう寝ますか?」
「寝る〜」
「じゃ、僕も寝ようかな」
「おぉ、おやすみ」
「おやすみなさい」


そうだ、思い返してみれば、あれは明らかに俺が寝るまで待ってくれていた。
このソファで、俺が一人にならないように、気を配っていたんだ。
なんてイケメンなんだ。

ミンソクはベッキョンの彼氏力の高さに震えた。
腕組みを解くと、ミンソクはその足でベッキョンの部屋へ向かった。
部屋を覗くと、そこにはちょうど彼一人しかいなかった。

一旦部屋から出て、宿舎にいる他のメンバーに「ちょっと二人になりたいからお前ら入ってくんなよ」と言った。
年長の特権だ。
いつも生意気な弟達だが、これは効くんだ。

「あの、ミンソギヒョン?僕、なんかしました?」

怒られると思ったのか、ベッキョンは少しビクビクしながら上目遣いに俺を見る。
何だか可愛くて、「そんなんじゃないよ」と笑った。
すると、安心したように、いつもの人懐っこい顔になったので、本題に入る。

「な、お前って、何でそんなカッコいいの?」
「へ・・・?何ですかいきなり」

面食らったようにきょとんとするベッキョン。
かっこいいというより、大分可愛い。
それなのに、彼氏力の高い行動がさらっとできる。
底知れない男だ。

「うん。実はな、俺も人をキュンとさせられるような男になりたいんだ」
「俺もって・・・え、ヒョン、僕にキュンとなるんですか?」
「あ、いや、そこ、今は関係なくて、」

違うポイントに食いつかれて少々たじろいだ。
ちょっと語弊のある言い方だったかもしれない。
慌てて顔の前で手を振る。
こういうあたふたした感じも、俺の理想とする彼氏力の高い男とは違うんだよな・・・。

ミンソクは人知れず落ち込んだ。

「え〜?何でですか?すごく気になります」
「いいから!ねぇ、彼女とはいつもどんな事してんだよ」
「僕の彼女の事なんて、今はどうでもいいし、それに、どうせニュースで知るじゃないですか」

少しうんざりしたように言うベッキョンにミンソクはすがりついた。

「そういうのじゃなくてさ、例えばほら、こないださ・・・」

先程思い出した話をして、「あれ、嬉しかったんだ」と言った。
ベッキョンは少し恥ずかしそうに「うわー・・・」と言いながら首の後ろを撫でた。
なんだ、その反応・・・、カッコいいじゃないか。

メモしたい衝動に駆られつつ、ミンソクは見逃すまいと大きな目をぱっちりと開けてベッキョンを見つめる。

「そんなに見つめないで。恥ずかしい・・・」
「今みたいな話って、ペンも見れない事だから世間は知らないだろ?そういう、見えないとこでの行動とかさ。そういうのが知りたいんだ」
「はぁ、けど、男相手でも、ああいうの、キュンとなるもんですかね?」
「するよ!したんだから!あ、あの時は気付かなかったんだけど・・・さっき気付いて。すごくキュンとしたよ!」
「へぇ・・・何か、恥ずかしいけど、そう言われると嬉しいですね」

ベッキョンは目を細めて俺を見た。
不思議と余裕のあるイケメンに見える。
彼氏力の高い男は、可愛くてもイケメンに見えるものなのか。
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