超にゅースター

□平行線の僕ら
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24/7シーズン3、最後の収録で、
『自分が女なら、誰を選ぶ?』
というありがちな質問を受けた。
俺は至極真面目にインタビューに回答し、
なかなか具体的でまとまった答えができたと満足していた。


その後の放送で、VTRを見て初めて俺達が相思相愛だと知った。
しかし、相手の回答にすこーしだけ、不満がある。

「ソンジェ、あのコメントは投げやりすぎじゃないか?」
「んえ?」

チゲを頬張るソンジェを小突くと、間抜けな声を出して振り返った。

「なんで?投げやりじゃないよ」

平然とそう言うので、「なら、もっとひどいよ」と大げさにうなだれて見せた。

「だって、俺のコメント見ただろ?超良かっただろ?」
「ん〜」

再びチゲに夢中になり相手にしてくれないので、
しばらく恨めしい目でソンジェを睨んでから、諦めてスマホをいじることにした。
ツイッターを見ると、相変わらずゴニジェ人気はすごい。
別に嫉妬しているわけじゃない。だけど、面白くない。
TLにゴニジェ写真が流れてきて、意外にもいい写真だったので眺めていると、
突然横から声が聞こえた。

「ユナギョン」
「ん」
「何の写真見てんの」
「ん?何かミルキーが・・・」

見ていた写真をソンジェに見せようとした所で、何となく恥ずかしくなって隠した。

「僕らの写真見てたの?」
「別に・・・」
「僕の?それともゴニリの?」
「何だよそれ」
「ははは」

適当にからかいながら、空になった器を片付ける広い背中を睨みつけた。
どっちでもいいと思ってるくせに、こっちが気にすることを言ってくる。
先ほどの不満がメラメラと復活してきて、口を尖らせた。

「だいたいさ、ソンジェはゴニルの彼女がいいんじゃなかった?
ゴニルはゴニルで、ソンジェが彼女って言ってたし・・・」

そこまで話してから、ハッとした。

「・・・なぁ、もしかしてさ、お前ら二人で俺のことからかった?」
「何で?」
「だって、そうじゃん。二人して俺を選ぶとか、出来すぎじゃん。誰が得すんの?こんな・・・」

超意味わかんない・・・
ぬか喜びとはまさにこのことだ。
腹が立ったので、ソンジェに背中を向けて座った。

「ユナギョンどうしたの」
「・・・・・・」

無視だ。こんなやつ。
そう心に決めて、呼びかけを無視した。

「ユナギョンってば〜」
「・・・・・・」

返事をしないでいれば諦めるだろうと思ったが、「ユナギョン!」という声とともに、
背後から抱きすくめられた。

「お、おい!何すんだ!」
「だって無視するから」

ソンジェの長い腕が、ぐるっと俺の体を回って巻きついていて、解けそうにない。
というか、腕を掴まれて身動きが取れない。

「離せよ暑苦しい」
「・・・・・・」

こっちが不機嫌なのを承知で抱きついてきたくせに、ただ抱きつくだけで、
弁解の言葉などはなかった。

「腕が痛い」
「・・・・・・」

情に訴える作戦に出ても、しがみついて離れない。
気は長くないほうなので、そろそろキレそうになってきた。

「おい」
「・・・・・・ヒョンは誰を選ぶの」
「あ?」

叱る準備をしていた俺は、予想外のコメントに上手く対応できなかった。

「僕とゴニルとグァンス、誰を選ぶの」
「何が」
「ユナギョンは僕を選んだ」

そうだ。だけど、だからなんだ。俺の純粋な乙女心を返せ。乙女じゃないけど。
冷めた気持ちで遠い目をしていると、更にギュッと腕に力を入れてきた。
「ぐぇ」とわざと声をあげる。

「それと同じに、僕はユナギョンを選んだ」
「は、本当はお前らが相思相愛なのに」
「だめなの?」

俺が喋ってるのに、言葉を遮ってきた。

「ゴニルは大好きだよ。愛してる。けど、ユナギョンも大好き。
今回は僕が女ならってシチュエーションだったから、あんまり身は入らなかったけど
ユナギョンが僕を男として選んでくれたの、嬉しかった」
「えっと・・・」

抱きしめられたまま、ソンジェの声だけが体に響いてきて、
何ともいたたまれない気分になった。
予想だにしない反撃に、正直たじろいでしまって、
まっすぐ前を向いたまま硬直してしまった。
そんな俺を見て、ソンジェはクスッと笑ってから俺を開放した。

「ユナギョンは本当に天邪鬼だね。
けど、僕は寛大だから、何度でもチャンスをあげる」

そう言うとソンジェは出口に向かってスタスタ歩いていった。
俺は、彼の言葉に甘えて、広い背中をじっと眺めて見送った。
多分、ソンジェの言うチャンスとは、今彼を追いかけること。
だけど、俺が素直に追いかけるような男じゃないと見越して、ああ言ったんだと思う。
ここで追いかけない俺も俺だけど、予防線を張るあいつもあいつだ。
俺がゴニルなら、追いかけて、素直に謝って、許しを請うのだろうか。
俺がゴニルなら、あいつは生意気な態度を叱責して、謝れとか言うのだろうか。

くるくると、想像してみても、それは俺じゃないからわからない。
無意味な妄想はやめて、部屋の中で一人、感傷に浸った。

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