輝く豆腐たち

□二人きりになりたい
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ベッドに腹ばいになって携帯ゲームをしていたら
ノックの音がしたので「どうぞ」と携帯の画面に向かって大声を出した。

「オニュヨン」

部屋を訪ねてきたのはテミンだった。
声だけで誰が来たのか分かったので顔は上げずに
要件は何か聞いたけれど返事は無かった。
顔を上げようとしたところでテミンが隣に寝転がって
僕の腰に腕をまわしてくっついて来た。

「ふふ、くすぐったいよ。どうした?」

キリの良いところまで来たのでゲームを閉じて聞いた。

「ミノヒョンは」
「知らない。どっか行ったみたい。ミノヤ探してるの?」
「ううん」

もぞもぞしてから、テミンは腹ばいになり僕が握っていた携帯を奪おうとした。
見られて困るものは無いけれど、その手をやんわりと制止する。

「何だよ」
「だって」
「ん?」
「今、ヒョンを独り占めできるのは僕だけだから」

彼の言う言葉の意味が分からなくて怪訝な顔をしていると、
テミンがいたずらをした後のような顔で微笑んだ。

「少しの時間だけ、僕だけのヒョンになって欲しいんです」
「どういう意味?」
「意味はないですけど、ヒョンに甘えたい気分なんです」
「いいよ。何すればいい?」

枕に頬をつけて上目遣いにテミンを見るとのしかかってきたので
うめき声をあげて「重いよ」と抗議した。

「ヒョン」

のしかかったまま言うので、「何だよ、降りてよ」と少し不機嫌な声で言った。
テミンは言われた通り、素直に降りて正座になったので、少し意外に思って
頬杖をついて振り向くと、俯いたままのテミンが神妙な顔をして呟いた。

「僕、ヒョンが好きだよ」
「うん?僕も好きだよ」

覗き込むようにして言ったら、満面の笑みで僕を見て、頬にキスしてきた。
「おい」と声をかけた所で、タイミングよくミノが帰ってきた。

「わ、テミナ、何で正座なんかしてるの。怒られてたの?」

ミノは凛々しい眉毛を思いっきり下げてテミンを後ろから抱えると、
「ああ、可哀想に、可哀想に」と言ってゆらゆら揺れる。

「怒ったりなんか、してないよ」
「嘘ですよ、じゃなかったらどうしてテミナは正座でオニュヨンはそんな格好なんですか」
「んー、ヒョンだからかな」
「はぁ、こんなに可愛い弟をいじめて・・・・・・」

大げさにリアクションをして泣きまでするので思わず笑うと、
テミンを抱き抱えたままのミノも笑った。

「ミノヒョン帰ってきたから、僕部屋に戻ります」
「何で?俺とも一緒にお話ししようよ」
「べー」

テミンはミノの腕をのけて、本当にそのまま部屋を出て行ってしまった。

「ちょっと、オニュヨン!見ましたか?!今の!」
「見てた見てた、めっちゃ面白かった」
「まぁ可愛いからいいか」

ミノは一人で納得し、荷物の片づけをはじめたので
ベッドに横になって天井を見上げる。
僕の頬にはテミンの唇の感触が残っていたけれど、
あの時の一瞬の胸の鼓動は何だったのか、
感情の乱れに名前を付けられないままで、
思考を停止させるためにも目を閉じることにした。

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