特設会場

□月明かりふんわり
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風が吹くたびにざわめく桜の木は、すっかり葉桜になっていた。
ユグォンとジホは縁側に並んで腰掛けて、3色団子を頬張っている。
浮いた足をぶらつかせながら、ユグォンは呟いた。

「俺、こーゆーのはあんまり苦手だ」
「何で?俺は雰囲気あって結構好き」
「庭園が目の前に広がる縁側で、お前と一緒に団子なんか食いながらこうしてんのって」
「年寄りっぽい?」
「ちがくて。隣にいんのがお前なのが、すげーヤダ」

ユグォンの呟きに、ジホは噴き出して笑った。
その拍子に口に咥えていた竹串が落ち、足元に茂る草の上に転がる。
二人してその行方を眺めたが、なかなか動かないジホに痺れを切らせたユグォンは、ため息をついて拾い上げた。

「お前さ」
「土にかえそうかと思って」
「ガキかよ」
「冗談だよ。もうワンテンポ遅かったら俺が拾ってた」
「少しの時間でも、こんなに手入れされた庭園にゴミが落ちているなんて、ありえない」
「ふうん。俺と居るのが気に入らないだけで、この場所自体は好きってわけね」

ジホはユグォンが拾った団子の串を受け取りながら唇を尖らせた。
真顔のままのユグォンは、動じた様子もなくいつも通りの調子で「ジホ」と呼びかける。
やや不満げな表情のジホは気持ちユグォンの方に顔を向けた。

「ジホ、露天風呂行く?」
「行く」
「風呂からあがったらさ、浴衣になって、その辺りを歩いてみようか」
「名案!」

ユグォンの提案に、ジホはパッと笑顔になる。

「じゃ、行くか」

腰を上げたユグォンはジホに手を伸ばし、立ちあがるのを手伝った。

「ユグナ、」
「うん?」
「好きだよ」

ジホが立ち上がれば、ユグォンよりも背が高くなる。
見上げるのが嫌なのか、ユグォンはジホの肩口あたりを見て目をそらした。

「さっさと行こう。この時間なら、貸切かもよ」

先を行こうとするユグォンの肩を掴んで振り向かせると、ジホはその唇にキスをした。
軽く触れるだけのキスの後、驚いた顔をしたユグォンの頬を優しく撫でる。

「貸切だったら、ヤバいかも。ねぇ、一回抜いていく?」
「アホ」

鳩尾をチョップして、ユグォンは先を行ってしまう。

「ユグ、」

呼び掛けるのと同時にユグォンは振り返ると、ふっと表情を緩めた。

「散歩の後、縁側でする?夜風に当たりながら、気持ちいいかもよ」
「する!」

飛びつくと、ユグォンはジホの額をペシンと叩いた。

「冗談だよ。誰かに見られたら事だ」
「ユグ、期待させといて、それはないでしょ」

後ろから抱きついたジホは、ユグォンの耳元に口を寄せた。
ユグォンは肩をすくませると、身をよじってジホを見る。

「やっぱり、今しようか」

そう言うと、少し背伸びをしてジホの首を掴んで唇を奪った。
体重をかければ、ジホはしゃがんで床に寝ころぶ。

「ユグナ、いいの?」

ジホが訊ねると、ユグォンは立ち上がって開け放たれたふすまを閉める。
そうしてから、改めてジホに覆いかぶさっておでこを擦る。

「もう見えない」
「ふふ、そだね」

キスをして、体を触り合いながら、ユグォンは目を閉じた。

「本当は、ゆっくり露天風呂にも入りたいし、景色も楽しみたい」

ジホはユグォンを抱きしめて、頭を撫でる。

「ごめんね」

謝ると、ユグォンは服の上からジホの胸にキスをして「ちがう」と言う。

「だからヤだったんだよ」
「ん?」
「お前といると、したくなるから・・・」
「・・・わお」

ジホはおどけて言ってから、真剣な目でユグォンを見た。

視線を合わせながら、ユグォンは自分の唇を舐める。
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