Realヴィ

□ある日の朝D
1ページ/2ページ


余った生地の入ったボウルにラップをかけ、冷蔵庫にしまう。
エンのゆっくりした動作を見るでもなく、湯気の立ち上るホットケーキを見るでもなく、ヒョクはただ、その両方を目の端に捉えながら佇んだ。

エンは大皿に乗せていたホットケーキを、ヒョクが用意してくれた皿に移した。
出来立ての方をヒョクに押しつけ、キッチンを出た所で、それまでの暗い気持ちを断ち切るように、クルリと振り返った。

「ヒョガ」

キッチンに立ったままのヒョクに声を掛ける。
目が合うのを確認すると、エンはつとめて笑顔を作った。

「ホットケーキが作れるようになったのは、ヒョガのおかげだよ」
「・・・・・・」
「眠くて辛い時は、ちゃんと寝た。体力はそれほど必要じゃない仕事の時だけにしたりとかね」
「そう、ですか」

ヒョクは少し恥ずかしくなった。
自分の発言のために、エンが無理していると思っていた。
そして、それがとんでもなく鬱陶しいと思うのに、同時に、自分のためにホットケーキを焼く練習をするエンを見る度、胸がキュンとして、嬉しいと感じていた。

「そうですよねぇ・・・」
「ヒョガ?」
「エニョンはそこまでバカじゃなかった」

ヒョクがおちゃらけて言うと、エンは苦笑しながら「それに」と続けた。

「それに、ヒョガはさ、自分が言った言葉を、俺が間に受けて頑張りすぎちゃうの、嫌がるでしょ?だから、牽制するみたいに、俺がホットケーキを作る日は、早起きしてたんでしょ?」

ヒョクは目を丸くした。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ