Realヴィ
□全部好き
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トークイベントではメンバーが横一列に並んで座る。
机には飲み物が用意されており、丁度ホンビンの前に数本のペットボトルが集められていた。
トークの最中、ホンビンがその中の1本を手に取ると、左から浅黒い手が伸びた。
しかし、ホンビンはその手を無視して水を煽ると、そのまま右隣にいるウォンシクに渡す。
「ありがと」
「ちょっと…!」
ホンビンの左側でハギョンが抗議したが、ホンビンは全く聞く耳を持つ様子がない。
ウォンシクが飲み終わるのを見計らって、ハギョンはウォンシクに手を伸ばした。
それに気づいたウォンシクは、素直にハギョンに渡そうとしたが、ホンビンがペットボトルを取り上げてしまった。
「ホンビナ〜?」
ハギョンは苦笑してホンビンの首の後ろを強く揉む。
堪らずホンビンはハギョンにペットボトルを渡した。
***
宿舎に戻ったウォンシクは、すぐさまホンビンをリビングに呼んで、ソファに座らせた。
因みに、トークイベントの後、他のメンバーは私用や仕事でまだ帰っていない。
面白くないことが起きると予想していたホンビンは、ソファにだらしなく座ると「なに〜?」と言って携帯をいじった。
ウォンシクは携帯を取り上げると、テーブルに置く。
素直に手を開いたホンビンは、観念したように両手をあげ、ソファに深く座りなおした。
前かがみになり、自分の膝に両肘をつくと、下からウォンシクを見上げる。
その顔には「何で同い年のお前から説教受けなきゃいけないわけ?」という言葉がありありと浮かんでいた。
ウォンシクは呆れた表情でため息をつく。
「エニョンが水欲しがってたろ?」
「何の話?」
「わかってるだろ、さっきのイベントの話だよ」
「ハイハイ」
「水分補給は大事だ」
「ふざけてただけじゃん」
「それで拗ねて飲まなかったらどーすんの」
「本気で欲しがってるかどうかは、見ればわかる」
黙ってしまったウォンシクに、ホンビンは心の中でにやりとした。
最近知ったことがある。
ウォンシガは、俺とエニョンの付き合いが長い事を匂わせると少し拗ねた顔をするのだ。
口を閉じているウォンシクに、ホンビンは続けた。
「確かにエニョンをからかうのは、ある種生き甲斐に近いものがあるけど、エニョンのキレポイントは熟知してる」
「そう」
ホンビンは今度こそ、笑くぼを作って笑った。
「なぁ、シガ、嫉妬してんの?」
ウォンシクは勢いよく顔を上げて「は?」と声を上げた。
嫌そうな表情のウォンシクを余裕で眺めて、ホンビンは更に続けた。
「俺がエニョンを構い過ぎるのが嫌?」
「全然。つか、今お説教タイムって分かってる?」
「お説教タイム終わり。今は、ウォンシガへの詰問タイム」
「さっき答えた通りだ。嫉妬してません。はい、終わり」
「なぁ、俺がエニョンと付き合いが長い事、気にしてんの?お前の知らない、俺とエニョンの思い出に、嫉妬してんの?」
驚いた表情で固まるウォンシクを、ホンビンは嬉しそうに眺めた。
小さな口を、ちょっとだけ開けて驚くウォンシクに、ホンビンは欲情した。
「かわい。ね、嫉妬したんでしょ?」
言いながら、ホンビンはウォンシクをソファに押し倒した。
「してない、・・・んん」
抗議の言葉を受け止めたうえで、唇を塞ぐ。
「俺は分かってるぞ」
「例えば?」
「たまに嫉妬しちゃうシガの事」
「してないってば・・・わ、冷たっ!」
ホンビンがウォンシクのパーカーをたくしあげ、脇腹を撫でた。
「素肌にパーカーなんて無防備な格好してたら、そりゃ、こうなるよね」
「ならねーよぉ・・・やめ、」
「やめない」
「寒い」
腹を撫でるホンビンの手を、ウォンシクは緩く掴んで抵抗する。
ホンビンは嫌がる腕を強引に払いのけると、ウォンシクのパーカーの裾を整えた。
「シガ」
「うん?」
「部屋行こうか」
言葉の意味を理解したウォンシクは、俯いて頷いた。
可愛いウォンシガ。
頑ななウォンシガ。
でも、意外と流されやすいウォンシガ。
エニョンを心配するウォンシガの顔も、エニョンに嫉妬するウォンシガの顔も、俺を叱るウォンシガの顔も、俺にすがりついて鳴くウォンシガの顔も、全部、好きだよ。
END