長編夢小説。

□※薔薇シリーズ総合解説※
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※「薔薇シリーズ」総合解説&コメント※
章ごとにページを分けます。

まずは第一章「薔薇の病室。」

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幽助主観から始まるこのお話。
元は読み切りでした。
とにかくギリギリの精神状態の蔵馬くんが書きたくて書いたのですが、まさか長編へ発展するとは・・・。

ヒロインさんが事故に遭い、ずっと悔やんでいた蔵馬くん。
蔵馬くんが「たられば」を口にする、なんて恐らく滅多にないんじゃないかなと思ったり。
「オレと出逢ってなければこんなことには」なんて繰り返し繰り返し自分を責め続けます。
そんな蔵馬くんを常に心配する幽助。
「どう言葉をかけてやるのが一番で正解なのか」
幽助は軽はずみに「大丈夫だから」などという言葉は口にしません。
根拠のない自信や上辺だけ取り繕った態度は蔵馬くんを傷つけるだけだと知っているから。
ただずっとヒロインさんの手を握って後悔に押しつぶされそうな蔵馬くんを見守ります。
友人としてもそうですが、それは時に影のように。
蔵馬くんが押しつぶされてしまわないよう、いつも支えているのです。

慰めることも励ますことも、本当なら出来るのです。
でも、それを蔵馬くんが受け入れることはしないと幽助は知っています。
こんな時に同情や同調されることが必ずしも正解ではない。
特に蔵馬くんは責任を感じているので「お前が悪いわけじゃない」なんて言っても逆効果でしょう。
蔵馬くんの性格を分かっているからこその幽助の判断でした。

ただ眠っているだけのようなヒロインさん。
コレが余計に辛さを増します。
いつ目覚めてもおかしくない。だけどその日はいつなのか分からない。
待つことしか出来なくて、いつまで待てばいいのかゴールは見えず。
それでも願うしかない。
「早く笑って」と。

「泣き虫だから」なんて言いながら、自分の心を隠す蔵馬くん。
「お前もだろ?」そう言われて「泣かない。泣けない。」とひたすらに感情を押し殺す。
泣かない強がりも、泣けない辛さも幽助は知っていて、
誰よりも優しく、何よりもヒロインさんを愛している蔵馬くんの肩に触れます。
細い肩。
その現実に触れる度に心が乱れる幽助。
幽助は「気付いてはいけない」と、蔵馬くんは「気付かないように」している。
見て、知ってしまえばきっとなにもかも狂ってしまうから。

まるで心象風景化のような天気。
少しだけ開いた病室のドアから流れてくる消毒液の匂い。
現実から隔絶されたヒロインさんの病室は、悪い夢の世界のよう。

「無理すんなよ」精一杯の言葉。
閉まっていくドアの向こう。
せめて涙を流してほしいと願うなんて、どうかしているのか。
泣いてどうなるという訳ではない。
ただただ必死に、たった一人ですべて背負おうとする蔵馬くんに、
本当は幽助は「オレらを頼れねぇのか?」と言いたいのかもしれない。

いつになったら、蔵馬くんの心は晴れるのか。
幽助は蔵馬くんの抱えているものを少しでも持てないかと考えているのですが
蔵馬くんがそんな隙を見せるはずもなく。

どうするのが正解なのか。
いつになったら晴れるのか。
「バカやろ。」なんて、空に言っても返事はないのです。
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