部日誌

□小さな幸せ配達人
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『すみません、矢巾くん呼んでもらえますか?』


昼休み、弁当を食べ終わってスマホをいじりながらクラスメイトといつものようにくだらない話をしていると教室のドアの辺りから聞き慣れた声が聞こえてふと顔を上げる。

「名字先輩!」


あ、いたいたーと小さく手を振ってくれる。慌てて駆け寄れば、手にはプリントの束が。


『来月ね、練習試合あるからその詳細。目通しといて?』


はい、と差し出されたものを見れば日程や持ち物などいつもと変わらないフォーマット。



俺は知っている。練習試合や合宿の時のこういったプリントをマネージャー業務で疲れているはずの名字先輩が毎回家で作ってくれていることを。



そして、いつものことながら…部活で配れば良いのに、名字先輩は部員それぞれのクラスに配りにやってくる。それも、オフの月曜日に。




「…いつもわざわざありがとうございます…!」




俺は今きっととんでもなく緩い顔をしているのだろう。その証拠に廊下にいたクラスメイトが噴き出している。ああ、後でからかわれるんだろうな。


『どういたしまして。じゃあ渡くんのクラス行ってくるね、また明日』




うちの部のマネージャーさんはこういうコミュニケーションを欠かさない。




癒されているのは俺だけではないはずだ。

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