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話しかければ目を逸らされるか逃げられるか。また時には睨まれたりすることもあった。

そんなことがほとんどで恥ずかしいことに俺には友達ができたことが一度もない。中学卒業までずっとぼっちだぞ。寂しすぎるだろ。

さすがに俺もいい加減このままでは駄目だと感じていた。高校では友達を作りたい。そう思った俺は自分を変えようと決心した。

高校を地元から離れたそれも全寮制男子校を選んだのもそのためだ。この学園の特待生枠に合格した時両親は今までにないくらいに大喜びしていたな。これで将来が保障されたようなものだとも言っていた。

つまり俺は高校デビューというものをしようとしていたのだ。

第一印象を良くするためにはやはり見た目は良いに越したことはないだろう。そう考えた俺はとにかく見た目に気を使うようになった。

肌や髪、爪の手入れまで隅々と。それこそ入学までに出来ることは全てやったつもりだ。

そうして迎えた入学式。






結果から言うと俺に友達は出来なかった。

勇気を出して話しかけようとすれば何故か相手は決まって顔を赤くし奇声を発せられる。

なんだか以前より状況が悪化したような気がするんだが。

俺はお化けか何かか。頑張った結果がこれだと思うとさすがにつらい。

こうしてまた高校でも以前までと変わらぬ一人の生活が始まったのだった。

そんな出来事から約二週間が経とうとしている今。

寮に戻ると一人部屋のはずの俺の部屋には見たこともない生徒が立っていた。

「お前すげーかっこいいな!なぁなぁ名前何て言うんだ?」

キラキラとした目で見つめられそう言われる。なんか声やたらデカイな。見た目マリモにしか見えないし。いやそんなことより何で俺の部屋に…。予想外の出来事に混乱しすぎて頭から湯気が出そうになる。

あ、もしかして転入生か何かか?でもこんな時期に転校してくるなんて珍しい。

「おーい!聞いてるのかよ?!」

目の前で手を振られてハッとする。よくわからないがもしかしたらこれは神様が俺に与えてくれたチャンスなのかもしれない。

正直苦手なタイプだ。でもそんなこと思ったらいけない。さぁ今こそ自分を変えるんだ。

「俺は祇園春樹だ。これからよろしくな。わからないことがあったら遠慮せずなんでも聞いてくれ。」

そう言ってフレンドリーに微笑む。笑顔なら入学前何度も鏡の前で練習してきた。すると相手は途端に顔を真っ赤にして俯いてしまった。

あぁまた失敗した。やっぱりこの反応か…。でも奇声を発せられなかっただけまだマシなのかもしれない。

「俺は東雲光!光って呼べよな!」

初対面なのにいきなり名前呼び?!友達居ない歴=年齢の俺にはかなりハードル高いぞ。

勢い良く顔を上げた相手にガッと両腕を掴まれる。な、なんだ…?!

「今日から俺はお前にとって一番の友達だからな!春樹!よろしく!」

一番の友達…。そういうのは人に言われてなるものなのか?まさか俺が他に友達が居ないのを見越してそう言ったのだろうか。そうだとしたら俺はそんなにも友人が居なさそうに見えるってことで…。なんだか悲しいぞ。

ん…?あれ、そんなことより今友達って言わなかったか…?

「友達…なのか…?」

ぽつりとそう呟けばニカッと笑われる。

「あたりまえだろ!」

どうしよう俺の聞き間違いじゃなかった。こいつと…いや、光と俺はこんなにもあっさりと友達になってしまったのだ。今までの苦労って一体…。



入学から二週間。初めて友達が出来ました。
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