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生徒会室が何者かの手によって荒らされてから約一週間。あれからは特に変わったこともなく結局犯人もまだ見つかっていないままだった。

俺は急いでいた。風紀室寄ったから今日は遅くなっちゃったなぁ。

会計が毎日仕事するようになったおかげで俺達の仕事はかなりラクになった。それでも四人分の仕事を三人でやってるわけだからまだ多いけど。

仕事は一応滞ることなく順調に進んでるといえる。だから本当ならばこんなに急ぐ必要はないんだけど…。

相川はどうしてるんだろう。俺の予想だとそろそろ接触してくる頃だと思うんだよね。

取り巻きだったはずの会計が突然自分の元へ来なくなるなんてあいつからしたら一大事だろうし。だから相川はいつ生徒会室に来てもおかしくないはず。

「おい!待てよ!!」

突然デカい声が響き辺りを見渡す。他に人は居ないし声掛けられたのって多分俺だよね。噂をすればなんとやら…。そこには腕を組んで偉そうに仁王立ちする相川柚希の姿があった。






まさか生徒会室じゃなくて俺の方に来るとはね。てっきり真っ先に会計の元に向かってるものだと思ってたのに。てかなんで俺のとこ来た?こいつ言葉通じないし相手するのめんどくさいなー…。

「お前が来てからいろいろおかしいんだ!那智は俺のこと避け始めるし祥哉も沙織も来なくなったし!あいつらになにしたんだよっ!」

キッと俺を睨みつけてくる相川。あーなるほどね。つまり気付いちゃったのね。でもうさちゃんと会計はともかく副会長は俺関係ないんだけどなぁ。むしろそれ聞いた俺の方がびっくりなんだけど。あんなにベッタリだったのに副会長来なくなったの?

「何って…別に何もしてないよ。」

当然誤魔化しますけど。困ったように笑ってみせる。すると相川はハッとした様子で今度は何故か嬉しそうに声をあげた。

「そうかっ!お前も俺のこと…だ、だからってダメなんだぞ!俺は皆のものなんだからな!!」

はぁ?何か勘違いしちゃってるよこの子。しかも自分は皆の物発言…。うわぁ。

「はい勘違いおーーーっつ!!」

突然そんな叫び声と共に俺と相川の間に誰かが割って入ってきた。え、なにこの展開。

「な…っ?!誰だよお前!!」

相川の方もかなり驚いたらしい。無意識にか後ろに一歩下がっていた。

「僕は遥様の下僕だよ!それより遥様がお前を好きになるとかありえないから!……あ、その蔑んだ目最高です…っ。」

下僕って…。なんか前よりさらにキャラ崩壊してる。現れたのはいつかの変態柴咲剣だった。ちょっと期待した気持ち返して。最悪。めんどくさいのが二人に増えただけじゃん。

「お…お前おかしいぞ。」

心底引きましたという目で相川がそう言った。あの相川がこんな反応するなんて。恐るべし柴咲。

「うるさいなー。だいたい君常識知らなすぎなんだよ。いーい?まず言葉遣いからおかしい!遥様相手になんなのその汚ない言葉は。遥様罵って下さいって懇願するどころかお前呼ばわり?何様?俺が代わりにぶっ飛ばすよ。あ、遥様は俺のこと好きなだけぶっ飛ばしてくれて大丈夫ですから!俺殴られるのとか基本嫌なんですけど遥様はなんか特別みたいで…あれ?居ない…」








ふぅ…なんとか気付かれずに立ち去れたみたい。相川のやついい気味。あの様子だと暫くは解放されないだろうな。

柴咲があんなに気持ち悪いやつだったことには驚いたけど。結果的には相川も撒けたし助かったかも。

さっきの相川の様子だと紀藤も離れてることにはまだ気付いてなさそうだったな。…でも副会長はどうして相川のところに行かなくなったんだろう。どこに居るのかもわかんないし…。あの人の考えることはいつだって読みにくくて困る。

まぁ今は余計なことは考えないで仕事しますか。俺は生徒会室の扉を開け中に入った。そこでは会長と会計が黙々と仕事をしていて、なんか…空気重っ。

「遅いよ〜!」

俺の顔を見た途端安心したように微笑んだ会計。余程この空気に耐えれなかったんだろうな。

「聞いて〜、会長ってば超ひどいの。俺のこと馬鹿だって言うんだよー!俺こんなに頑張ってるのにさー。」

「菓子食いながら仕事する奴があるかって注意しただけだろう!書類所々汚れてて汚いんだよ!」

心底嫌そうな顔をする会長に少し同情した。菓子で汚れた書類提出されたら俺だってやだ。何とも言えず苦笑いすると会計が焦ったように顔を青くした。

「ち…違うよ!別にわざと汚したわけじゃないし!嫌ならもう食べないよ〜。」

「は?お前さっきまで絶対やめないとか言ってただろ。」

会長の言葉に会計はベーっと舌を出す。

「気が変わったのー!ただの気分なんだから。別にいいでしょ。」

会計のその言葉に会長は呆れた様子だったけどお菓子で書類汚れなくなるなら別にいいと思ったんだろうな。俺の方を向いてにやりと微笑んだ。

「ほれ今日の分。」

その言葉と同時に飛んできたのは一口サイズのチョコレート。あれから会長は何故か仕事に来る度チョコレートを渡してくる。美味しいからいいけど。

「あー!俺にお菓子ダメって言っときながらそういうことするの?!さいてー!」

むぅと不満そうな顔をした会計。なんだか騒がしいな。この感じ…

「俺達はお前みたいに書類汚さないからいいんだよ。」

なんだか昔に戻ったみたいだ…。






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