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ここは街から離れた場所に位置する全寮制男子校。

三年前のこの場所で、俺は多くの物を失なった。

地位も仲間も信頼も…。

それも、ある一人の転校生の手によって。

俺からすればそいつは最悪な人物。

相川柚希―アイカワユズキ―

この3年間彼を忘れたことなんてなかった。

「懐かしいなぁ…。」

無意識に呟いていた。

別に壊された過去等どうでもいい。

今更どうにも出来ないのだから。

そう…大切なのはこれから。

復讐を心に誓った日から、どんなに今日という日を待ち望んだことか。

君が俺から奪ったものを今度は俺が奪ってあげる―…。

だから…覚悟してね?

俺はまず、門の隣にあるインターホンを押した。

中に入らないことには何も始まらないしね。

飛び越える事も出来たけど、あえてそれはしなかった。

そんな事をすれば、三年前の彼のした行動と一緒になってしまう。

俺にとってこの世で一番憎い存在。

彼と行動パターンが同じだなんて絶対嫌だ。

『ーー…はい、どちら様でしょう?』

考え事をしていた俺は突然聞こえた男性の声にビクッと体を震わせる。

…なんだ。インターホンか。脅かさないでよ。

「…えぇと、本日転校して来ることになってた久遠遥ですけど…門、開けてもらえませんか?」

落ち着いた声で言う。

『あ―転校生の…お待ちくださいね。』

男性がそう言うと、すぐに門が開いた。

ていうか今日転校生来るって分かってたんなら門くらい開けといてよ。

それから門を通り抜けた俺はまず辺りを見渡す。

いや、道が分からないとかじゃないよ?

学園内の造りなら大体分かってるし。

そうじゃなくて……

案内役とか居ないの?

彼が転校してきた時は副会長が案内したのに。

そしてそれからすぐ学園が荒れ始めて…。

次々と転校生に惚れていく人気者達。

機能しなくなる生徒会。

あぁ…そうか。

じゃあ…もし学園が、生徒会があのままだったら?

あの転校生に今も引っ付いているとしたら?

果たして新たな転校生を迎えに行く仕事など誰がするだろうか?

予想はしてたけど…

何も変わってないんだね。

もしかしたら。

そんなことを頭の何処かで考えていた俺が馬鹿だったんだね。

でもこれで、少し揺らいでいた気持ちが固まったよ。

実は少し復讐なんて、と思っていた部分があったんだ。

俺は、生徒会の皆が大好きだったから。

でも、生徒会が…皆があの時のままなら、俺は遠慮なんてしない。

君達が大好きな彼と一緒に復讐してあげるよ。

さて、どうせ道は分かってるんだし案内役は居なくてもいいや。

俺は校舎へと歩き出した。


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